ⓔコラム9-2-3 末梢動脈疾患の検査法
末梢動脈疾患は,おもに動脈硬化が原因で末梢へいくにつれて動脈内腔が次第に狭くなっていく病態である.四肢,特に下肢において冠動脈疾患における高度狭窄・狭心症と同様のことが起こる.一般には「閉塞性動脈硬化症」とよばれるが,わかりやすくいえばあし (脚~足) の血管が完全に閉塞するか閉塞しかかって痛みを感じる「あしの狭心症」といえる.完全に閉塞すると閉塞部より末梢組織は壊死に陥るが,その一歩手前が安静時疼痛,さらに手前が歩行時疼痛になる.末梢動脈疾患は患者の自覚症状の程度により4つに重症度分類がなされる.よく知られた分類は末梢動脈疾患のFontain分類 (表1) である.最も軽症なのがⅠ度であり,無症状のこともあるが,下肢のしびれや冷感を訴えることもある.次がⅡ度であり,少し歩くと患側の足が痛んで,しばらく休むと直るという「間欠性跛行 (はこう) 」を訴えるようになる.進行とともに歩行距離が短くなったり休憩時間が延びたりして,連続歩行が次第に困難になる.さらに進行したのがⅢ度であり,いよいよ安静時でも足が痛むようになる「安静時疼痛」の段階に入る.Ⅲ度から先を「下肢重症虚血」「重症虚血肢」とよぶ.そして最終段階がⅣ度で,患側の足に潰瘍ができたり壊疽に陥って激痛を感じることが多くなり (糖尿病性神経障害が進むと痛みをあまり感じないことがあり注意を要する),足趾さらには足をも失うことになる.
足関節・上腕血圧比
末梢動脈疾患の検査ではまず触診で足背動脈の拍動を左右差なく触れるか確認する.かかと内側での後脛骨動脈拍動触診と,膝窩動脈における拍動触診を左右同時に行えばなおよい.また,上肢と下肢で同時に行う血圧測定も有用である.一般に,上肢に比べ下肢で収縮期血圧が10~20 mmHg高めになる.同時に測定した血圧が左右で10~20 mmHg以上差があるときは,動脈硬化性疾患や動脈炎症候群 (高安 (たかやす) 動脈炎) を疑う.上肢収縮期血圧を下肢収縮期血圧で割った値をABI (図1) とよび,正常では1.0~1.1になる.ABIが0.9以下のときは,下肢動脈の高度狭窄や閉塞すなわち閉塞性動脈硬化症の存在が疑われる (図2).このとき,さらに超音波検査や造影CT検査やMRA検査へ進む.
〔加藤 徹・野出孝一〕