ⓔコラム9-5-3 起立性低血圧に対する薬物療法
ノルアドレナリン再取り込み阻害薬アトモキセチンは,臥位および立位の血圧を上昇させ起立耐性を高める.α2受容体拮抗薬であるヨヒンビンも臥位および立位の血圧を上昇させ,神経原性起立性低血圧にある程度有効とされる.コリンエステラーゼ阻害薬であるピリドスチグミンも立位時の交感神経活動を亢進させるが,臥位ではその作用はないため臥位高血圧の副作用はみられない.なお,日本ではこれらの薬剤 (アトモセキチン,ヨヒンビン,ピリドスチグミン) の起立性低血圧に対する保険適用はない.ノルアドレナリン産性亢進作用のあるドロキシドパは交感神経改善作用,中枢性交感神経出力増加作用がある.ミネラロコルチコイドであるフルドロコルチゾンは保険適用外であるが,ナトリウム貯留により循環血漿量を増加させる.使用に当たっては低カリウム,臥位高血圧,心不全に注意する.ジヒドロエルゴタミンはα–アドレナリン刺激薬として静脈血管を収縮させるとともに脳循環自動能改善作用がある.インドメタシンはプロスタグランジンによる血管拡張作用を抑制し,二次的抗利尿作用による循環血漿量増加作用を有する.エリスロポエチンは赤血球,血流量の増加による血圧上昇作用を有するが,日本での起立性低血圧に対する保険適用はない.
〔佐藤伸之・長谷部直幸〕