ⓔノート10-2-2 治療薬の詳細
咽頭痛や発熱にはNSAIDsが用いられる.アセトアミノフェンはReye症候群や喘息発作などの副作用が少ないため成人・小児ともに用いられる.発熱症状の強い場合はロキソプロフェンなどが用いられる.この場合,アスピリン喘息や胃炎・胃潰瘍などの副作用の既往がないことを確かめる必要がある.
鼻閉には通常抗ヒスタミン薬を含有するPL顆粒Ⓡなどで対応するが,症状が強い場合は鼻充血改善薬 (ナファゾリン,トラマゾリンなど) の点鼻を用いる.
インフルエンザウイルス感染ではノイラミニダーゼ阻害薬 (オセルタミビル,ザナミビル,ラニナミビル,ペラミビル) やウイルスmRNA合成阻害薬 (バロキサビル マルボキシル製剤) が使用される.百日咳菌感染やマイコプラズマ,クラミジア感染では第一選択薬としてマクロライド系抗菌薬 (エリスロマイシン,クラリスロマイシン,アジスロマイシンなど) を使用する.
ウイルス感染の患者では抗菌薬の適応がない.ただし,膿性痰を伴うCOPD増悪症例に抗菌薬が使用される.また,インフルエンザウイルス感染の肺炎合併症例では重症化が指摘されており,入院の必要な肺炎症例には,わが国では抗菌薬を使用する (通常のかぜ症候群では使用されることは少ないが,A群連鎖球菌感染には抗菌薬を使用する【⇨6-1-1-2,⇨7-3-1-3】).
気管支に炎症が及んだ場合は咳を呈することがある.持続する咳や夜間の咳は就学や仕事を妨げ,睡眠障害を生じるため,鎮咳薬の処方を行う.軽症ではジメモルファンやエプラジノンなどを使用する.中等症以上ではコデイン製剤 (コデインリン酸塩,桜皮エキス・コデインリン酸塩など) を使用する.
インフルエンザでは予防にワクチンを接種する.インフルエンザウイルス以外の,かぜ症候群を生ずるウイルスに対するワクチンは実用化されていない.
〔山谷睦雄〕