ⓔノート12-1-2 HDVの重感染

 わが国ではHDVの重感染者はHBVキャリアの1%以下と考えられており,特定の地域 (長崎県や沖縄県の離島) を除くとまれな感染症である.急性肝炎および慢性肝炎を起こすが,いずれもHDVの重感染によりHBV単独感染よりも重症化すると考えられている.HDVに特異的な治療法は確立されていない.D型肝炎はHBV感染に依存するため,B型肝炎に対する抗ウイルス療法が行われる.また,HDVによる劇症肝炎,亜急性肝炎,肝硬変,肝細胞癌では肝移植の適応を検討する.予防に関しても,B型肝炎との同時感染はB型肝炎に対するワクチン接種で予防できる.しかし,D型肝炎に対する特異的ワクチンはないため,HBV持続感染者へのHDVの重複感染予防は血液からの感染対策を講じるしかないのが現状である.

〔脇田隆字〕