ⓔノート14-1-32 バスキュラーアクセスインターベンション

 VAIVTとしては,X線透視下によるVAIVTとは超音波ガイド下によるVAIVTの2種類が現時点では存在する (表1).X線透視下で行う場合,一般的には造影剤を使用するが,アレルギーの場合には,炭酸ガス (二酸化炭素) を使用して検査および治療が可能である.

表1 バスキュラーアクセスインターベンションの種類と特徴.

 炭酸ガス造影検査は,空気の混入やガス圧縮のための設備が必要であるが,特有の合併症もあるため,注意が必要である.具体的には,臓器の血流障害,潜在的な神経毒性および空気塞栓を起こす可能性がある.さらに,血管径によっては,炭酸ガスで充満させることができない1).また,合併症として,炭酸ガスが動脈内腔に停滞することによる血管閉塞 (vapor lock現象) や大腿からの炭酸ガスを使用した造影検査では腸管虚血,横紋筋融解症,脊髄虚血が報告されている2–4).炭酸ガスの性質として,低粘度で圧縮性があることに加えて,浮力があることから,明瞭に造影するためには注入速度を速くする必要がある.したがって,動脈系を逆流しやすいため,脳動脈に達し一過性の神経症状をきたすことがある.特に肘で作成したAVFの吻合部や,人工血管シャントの動脈側の造影では注意を要する5)

 近年,超音波機器の機能が向上したこともあり,被曝や造影剤アレルギーなどの観点から超音波ガイド下によるVAIVTが増加している.ほとんどの狭窄に対するVAIVTは超音波ガイド下で施行可能であるが,それぞれの特徴を理解したうえで,病変に応じてモダリティを決定する必要がある.例えば,中枢静脈狭窄に対しては透視下によるVAIVTが第一選択となり,合併症の観点から外科的なバックアップ体制を十分に確保する必要がある.また,動脈病変では,超音波で評価が困難な場合があるため,透視下でのVAIVTを検討する.AVGは,静脈吻合部狭窄の頻度が高いが,素材によっては超音波では内腔の評価が困難なため,素材や病変の状況など総合的な判断によりモダリティを決定する必要がある.

〔中村元信〕

■文献

  1. Cho KJ: Carbon dioxide angiography: scientific principles and practice. Vasc Specialist Int, 2015; 31: 67–80.

  2. Rundback JH, Shah PM, et al: Livedo reticularis, rhabdomyolysis, massive intestinal infarction, and death after carbon dioxide arteriography. J Vasc Surg, 1997; 26: 337–340.

  3. Fujihara M, Kawasaki D, et al: Endovascular therapy by CO2 angiography to prevent contrast–induced nephropathy in patients with chronic kidney disease: a prospective multicenter trial of CO2 angiography registry. Catheter Cardiovasc Interv, 2015; 85: 870–877.

  4. Johnston WF, Zamora AJ, et al: Transient paralysis from carbon dioxide angiography in a patient after four–vessel endovascular thoracoabdominal aortic aneurysm repair. J Vasc Surg, 2012; 56: 1717–1720.

  5. Ehrman KO, Taber TE, et al: Comparison of diagnostic accuracy with carbon dioxide versus iodinated contrast material in the imaging of hemodialysis access fistulas. J Vasc Interv Radiol, 1994; 5: 771–775.