ⓔノート14-12-1 PE症例の後ろ向き解析
当科で腎生検を施行した70例のPE症例の後ろ向き解析では,血清クレアチニン値倍加もしくは観察終了まで尿蛋白が持続した症例は14例であった.それらの症例では産褥後平均31日で腎生検が行われ,その後の観察期間は平均約2カ月であった.つまり,約20%のPE症例は産後3カ月以上,尿蛋白が持続し,腎機能低下が進行する可能性があることを示している.この14例と観察期間中に腎機能低下がなく尿蛋白が消失した56例との比較では,妊娠中の血圧値や尿蛋白量などに有意差はなく,臨床所見をもって予後を予測することは難しいと考えられる.一方,腎生検所見では,内皮細胞腫大の程度には (おそらく産褥後比較的早期に消失するため) 差がみられなかったものの,糸球体毛細血管係締壁二重化や間質細胞浸潤,および間質線維化に差を認めた.腎生検でこれらの所見を認めた場合は,腎予後が不良である可能性が示唆される.
〔成田一衛〕