ⓔノート14-5-1 Alport症候群診断基準の注意点

注1)  3カ月は持続していることを少なくとも2回の検尿で確認する.まれな状況として,疾患晩期で腎不全が進行した時期には血尿が消失する可能性があり,その場合は腎不全などのしかるべき徴候を確認する.

注2)  Ⅳ型コラーゲン遺伝子変異:COL4A3またはCOL4A4のホモ接合体またはヘテロ接合体変異,またはCOL4A5遺伝子のヘミ接合体 (男性) またはヘテロ接合体 (女性) 変異を指す.

注3)  Ⅳ型コラーゲン免疫組織化学的異常:Ⅳ型コラーゲンα5鎖は糸球体基底膜だけでなく皮膚基底膜にも存在する.抗α5鎖抗体を用いて免疫染色をすると,正常の糸球体,皮膚基底膜は線状に連続して染色される.しかし,X連鎖型Alport症候群の男性患者の糸球体,Bowman囊,皮膚基底膜はまったく染色されず,女性患者の糸球体,Bowman囊,皮膚基底膜は一部が染色される.常染色体劣性Alport症候群ではα3~α5鎖が糸球体基底膜ではまったく染色されず,一方,Bowman囊と皮膚ではα5鎖が正常に染色される.注意点は,上述は典型的パターンであり非典型的パターンも存在する.また,まったく正常でも本症候群は否定できない.

注4)  糸球体基底膜の特異的電顕所見:糸球体基底膜の広範な不規則な肥厚と緻密層の網目状変化により診断可能である.良性家族性血尿においてしばしばみられる糸球体基底膜の広範な菲薄化も本症候群においてみられ,糸球体基底膜の唯一の所見の場合があり注意を要する.この場合,難聴,眼所見,腎不全の家族歴があればAlport症候群の可能性が高い.また,Ⅳ型コラーゲン所見があれば確定診断できる.

注5)  特異的眼所見:前円錐水晶体 (anterior lenticonus),後囊下白内障 (posterior subcapsular cataract),後部多形性角膜変性症 (posterior polymorphous dystrophy),斑点網膜 (retinal flecks) など.

〔野津寛大〕