ⓔノート18-4-17　頭部X線写真の役割

　頸椎に比べ，頭部のX線写真の役割はCTの登場前後で大きく変化した．頭部X線写真が外傷時の骨折スクリーニングのため施行されることはあるが，大多数の骨折はCTでも検知可能である．さらにいえば骨折は見つけたところで，それ自体が治療対象にならない．治療対象はあくまでも付随する頭蓋内病変，例えば硬膜下血腫などである．このような観点からは救急の場面において頭部の単純撮影は割愛してよいという考えが主流となっている．

　通常の正面像や側面像のほかにもトルコ鞍撮影や視神経管撮影といった特殊な撮影も存在した．しかし，これらに関しても近年目にすることはほとんどない．なぜなら頭部単純写真から得られる情報はCTやMRIでも取得可能であり，必然的に単純写真の診断的意義は希薄となっているからである．

〔山田　惠〕