ⓔノート18-7-1 プリオン

 プリオンとは後述のCJDの研究において,伝達を引き起こす伝達因子が核酸を含まない蛋白質の感染粒子 (proteinecious infectious particle) であるという意味で付けられた名称で,伝達因子プリオンはPrPScそのものである.したがって普通のウイルスや細菌による感染とは異なることに注意が必要である.プリオン病はヒツジのscrapie,シカの慢性消耗病 (chronic wasting disease: CWD) など多くの動物でも知られており,ウシの海綿状脳症 (bovine spongiform encephalopathy: BSE) はヒトのvCJDの原因となることから人獣共通感染症でもある.

 プリオン病は発症率が100万人に1〜2名のまれな疾患で,特定疾患受給者数による日本の患者数は500〜600人である.近年アミロイドβ蛋白質,タウ蛋白質,αシヌクレイン蛋白質などほかの神経変性疾患の原因蛋白質も少なくとも動物では固体間の伝達が証明されており,プリオンとしての特徴を有することが注目されている.

〔水澤英洋〕