ⓔノート2-1-19 内耳気圧外傷と内耳型DCSの症状と治療
一方,内耳気圧外傷と内耳型DCSはともに回転性めまい (alternobaric vertigo),聴力低下あるいは耳鳴りが主症状となるが,それぞれの治療がまったく違ってくるので取り扱いが厄介である.内耳気圧外傷の場合は,症状が再圧により改善することはなく,むしろ増悪しやすい.内耳型DCSを疑う場合として,最大深度および滞底時間からDCSが発症するに必要な不活性ガス負荷があること,および/または,内耳症状以外の神経学的所見があることが挙げられる.なお,内耳型DCSは,ヘリウム酸素を用いた潜水で減圧中にヘリウム酸素から空気にスイッチした場合にしばしばみられ,isobaric counter diffusion (同圧逆拡散) といわれる過飽和現象によるものとされている.
なお,浮上時の気圧変動による回転性めまいは,耳管通気不良による中耳圧の相対的圧上昇によるもので症状は一過性であり,治療の対象ではない.
〔鈴木信哉〕