ⓔノート3-6-4 テロメア長の短縮
真核生物の染色体の両末端に存在するテロメア (染色体末端) は,TTAGGGからなる6塩基を1単位とする反復配列からなり,蛋白質と結合した複合体として形成されている.この反復配列は,ヒトの精子では20 kb,体細胞では6~10 kbの長さをもち,染色体を安定にし,末端にある遺伝子機能の欠失を防ぐ役割があると考えられている.真核生物のDNAは2本鎖として存在するため,複製に際して鋳型の3ʹ 末端の複製が不完全となる.テロメアの反復配列は,細胞分裂が繰り返され,DNAが複製するたびに短縮し,一定の長さに達すると細胞老化と分裂停止をもたらすことから,細胞寿命と密接にかかわる.一方,マウスの体細胞はヒト細胞に比べてテロメア長が長いものの,ヒト細胞と同様に細胞老化を生じることが知られており,テロメア短縮だけが細胞老化の原因ではないことを示す.
〔竹本 稔・横手幸太郎〕