ⓔノート7-2-6 輸入感染症の概念
輸入感染症の概念が成立した背景には,海外との交流により,感染症が海外から持ち込まれる可能性に直面したことにある.海外に渡航する日本人が,年間2000万人 (2019年推計) に近づき,また,訪日する外国人 (インバウンド訪日外国人) も3000万人 (2019年推計) に達するなど,日本と海外との人の交流は増加の一途をたどっている.在留外国人 (永住者や中長期在留者,留学生など) も,出入国在留管理庁による2019年の推計によると,約283万人,わが国の人口の2.24%を占めており,外国人材の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法案が 2018年12月に成立したこともあり,在留外国人の増加傾向は,これからも続くことが予想される.わが国のグローバル化と海外,特に感染症が流行している地域との人とものの行き来は,止めることができない.一般診療の場においても,輸入感染症の症例が増えると考えられ,臨床的な重要性は,今後さらに増すと考えられる.
〔金子 聰〕