ⓔノート7-2-7 感染症法に規定されていない感染症
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」により規定されていない感染症も存在する.例えば,中南米の一部でみられるChagas病については,感染蔓延地域から来日している長期滞在者の一部で慢性感染例が認められている.中南米地域からの在留者は約280万人であり,日本国内のChagas病の推計感染者は4000人とされているが,その正確な実態は把握されていない.Chagas病をはじめとする寄生虫感染症については,媒介昆虫を介した感染が起こりにくいことから国内での感染拡大は起こりにくいと考えられるが,輸血による感染が問題として残る.日本赤十字社では,献血の際,輸血による感染を防ぐことを目的とした予防的な措置として,本人や母親が中南米諸国で生まれ育った場合や同諸国に通算4週間以上滞在した場合に,献血血液の使用を血漿分画製剤のみに限定することとしている.
〔金子 聰〕