ⓔノート8-9-4 シャント閉鎖と薬剤併用法
現在,シャント孔が残存している (Eisenmenger症候群に至っていない) PAH患者群に対するシャント閉鎖指針と薬剤併用法に関しての議論が注目されている.小シャント合併PAH患者 (IPAHに小シャント合併と考えられている) 群は最も予後不良と考えられており,おもに海外ではシャント孔閉鎖の適応はないとされているが,わが国のIPAHの薬剤治療成績は海外に比べてきわめて良好であり,この小シャント閉鎖後の良好な経過を示す報告も散見されている.また,未修復シャント性PAHの場合ではガイドライン上1)ではPVR<2.3 Woodの場合のみシャント閉鎖を行うとしている.近年,未修復心房中隔欠損によるPAH症例において,この基準を満たさない症例でもPAH治療薬使用により治療することでシャント孔を安全に閉鎖でき,その予後・QOLにおいて良好な成績が報告されてきている2).今後PAH合併の未修復シャントのシャント閉鎖基準は大きく変化することが予想される.現時点では,シャント未修復PAHに対するPAH治療薬の使用方法には定まったものはないのが現状である.
〔八尾厚史〕
■文献
Galie N, Humbert M, et al: 2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension: The Joint Task Force for the Diagnosis and Treatment of Pulmonary Hypertension of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Respiratory Society (ERS): Endorsed by: Association for European Paediatric and Congenital Cardiology (AEPC), International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT). Eur Respir J, 2015; 46: 903–975.
Kijima Y, Akagi T, et al: Treat and repair strategy in patients with atrial septal defect and significant pulmonary arterial hypertension. Circ J, 2016; 80: 227–234.