ⓔ図17-3-3 低酸素誘導因子 (hypoxia–inducible factor: HIF)
低酸素誘導因子 (hypoxia–inducible factor: HIF) はHIFα とHIFβ の2つのサブユニットからなるヘテロダイマーで,腎臓でのEPO蛋白の特異的発現を亢進する.HIFβ が恒常的に発現されているのに対し,HIFα の発現は合成と分解のレベルで調節を受ける.正常の酸素濃度下では,分子状酸素を利用する水酸化酵素によりHIFα にある2個のプロリンと1個のアスパラギンが水酸化され,水酸化されたHIFは,von Hippel–Lindau (VHL) 蛋白に認識されてユビキチン化され,プロテアソームで分解される.一方,低酸素濃度下ではHIFα が水酸化されないため,プロテアソームで分解を受けずに安定な形で核へ移行,HIFβ と結合してヘテロ二量体を形成し,EPO遺伝子翻訳領域の上流3́ エンハンサー配列 (低酸素応答配列) に結合する翻訳複合体の一部となり,腎臓でのEPO蛋白の特異的発現を亢進する.HIFα mRNAの非翻訳5́ 領域には,鉄反応エレメント (IRE) があり,鉄が補充された場合にはIRPによる合成抑制を防ぎ,HIFα の合成が亢進する.HIFα は恒常的に産生され,核に移行する.
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