ⓔ図17-7-5 抗体医薬品の種類 マウス抗体は免疫原性が強いために,抗体に対する抗体 (human anti–mouse antibody: HAMA) の出現やアレルギー反応などから臨床応用は困難である.抗体医薬品は遺伝子工学的手法により,マウス抗体からマウス–ヒトキメラ抗体,ヒト化抗体へと改変することにより免疫原性の低下と治療効果の増強が得られて実用化が可能となった.マウス–ヒトキメラ抗体は,抗体の可変領域はマウス由来のままであるが,定常領域はヒト由来に改変されたもので66%がヒト由来である.ヒト化抗体は可変部領域のうち相補性決定領域のみがマウス由来で,その他のフレームワーク領域はヒト由来に改変されたもので90%がヒト由来である.ヒト抗体遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを用いて作製した完全ヒト抗体 (100%ヒト由来) も実用化されている.マウス由来抗体成分をヒト由来に改変することにより,免疫原性の低下が得られ一般臨床での使用が可能となったが,キメラ抗体に対する抗体 (human anti–chimeric antibody: HACA) やヒト抗体に対する抗体 (human anti–human antibody: HAHA) が出現する可能性があることに留意する必要がある.
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