ⓔ図8-5-24 症例4:大動脈弁狭窄症と診断されている90歳代女性の立位胸部単純写真
心拡大や大動脈の蛇行が認められるが,その他に気になる所見はないだろうか (A).心左縁を図Bの破線Aと判断した方はおられないだろうか.実は心左縁は線Bである (ただし下部は不明瞭).では破線Aは何の陰影なのであろうか.本症例ではCの斜線で示された空気濃度領域に注目していただきたい.他の目的で撮影された胸部CTにて胃のほぼ全体が縦隔に脱出する傍食道型の食道裂孔ヘルニアがみとめられており,Cで示されている空気濃度の領域は胃内のガスと考えられる.DのCT横断像で囲った部分が食道裂孔ヘルニアを起こした胃であり,内部に食物残渣が貯留している.本症例のほど大きなヘルニアはまれではあるが,高齢女性などで食道裂孔ヘルニアの陰影が心大血管影に重なる腫瘤影として認められることはしばしばある.縦隔の腫瘤様の陰影内にガス像や液面をみとめた場合は,食道裂孔ヘルニアの可能性を考えたい.
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