ⓔコラム17-3-1 腎性貧血治療薬

 慢性腎臓病では,内因性EPOの産生が低下し貧血をきたすため,それに対する治療薬として,赤血球造血刺激因子製剤 (erythropoiesis–stimulating agents: ESA) が広く用いられてきた.ESAは内因性のEPOと同じ構造をもつ遺伝子組み換え型EPOであるエポエチンアルファとエポエチンベータ,エポエチンアルファの5カ所のアミノ酸を入れ替え,2本の糖鎖を付加したダルベポエチンとエポエチンベータにポリエチレングリコールを結合させたエポエチンベータぺゴルがある.エポエチンアルファとエポエチンベータにはわずかな糖鎖の違いがあるのみで半減期は短く週3回の投与が必要なのに対し,ダルベポエチンは週1回,エポエチンベータぺゴルは4週に1回の投与でヘモグロビンを至適濃度に上昇させることができる.これらのESA製剤はいずれも静脈注射剤であるが,さらに経口投与可能なHIFの分解に関与するプロリン水酸化酵素阻害薬が開発され,ESA製剤と異なる作用機序で赤血球産生を亢進させる治療薬として用いられることとなった.この成果は,2019年のノーベル物理学賞が贈られた研究に基づいている (ⓔ図17-3-3).

〔髙後 裕〕