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内容紹介
20世紀後半に隆盛を迎えた認知心理学の,基本的な枠組みから応用の側面まで含めた,その全体像を幅広く紹介する。〔内容〕認知心理学の潮流/短期の記憶/注意/長期の記憶/知識の獲得/問題解決・思考/日常認知/認知工学/認知障害
編集部から
「認知科学が誕生して以来ここ半世紀,認知研究者としてその内部にいられたことは,今にして振り返れば実に幸せであった.学会発表を聞いていても論文を読んでいるときでも,そのひとつひとつが時代の最先端をいっているかのごとき雰囲気,さらには知的興奮を感ずることがたびたびであった. 最右翼に人工知能研究,最左翼に身体性科学,さらに文化心理学をおいて,人の心にまつわるさまざまな現象がタブーなしに自在に研究と議論の俎上にあげられてきた」
と,編者である海保先生は,その個人研究史を郷愁を込めてふりかえられていますように,20世紀後半の心理学において認知心理学の果たしてきた役割は大きくものがあります.実際,本講座でも,認知心理に関わる領域は,「認知心理学」の巻だけではなく,多くの巻にまたがっています.
では,いま現在はどのようになっているのでしょう? 海保先生自身は「成熟科学の常として,認知研究も,今,やや停滞感がただよいはじめている.クーンのいうパズル解き研究が全盛になり,それぞれの専門的なグループ内でたこつぼ化してしまっているようなところがある」と不満を隠されません.
本書では,記憶や注意といった認知心理学の基本的な枠組みをとりあげる一方で,認知工学や日常認知,認知障害などその新たな応用領域まで扱い,その現在のすがたの俯瞰を試みています.この基礎と応用との往復から,認知心理学の新たな地平がさぐられていいくことを期待します.