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朝倉心理学講座 4 脳神経心理学
内容紹介
脳科学や神経心理学の基礎から,心理臨床・教育・福祉への実践的技法までを扱う。〔内容〕神経心理学の潮流/脳の構造と機能/感覚・知覚の神経心理学的障害/認知と注意/言語/記憶と高次機能/情動/発達と老化/リハビリテーション
編集部から
神経心理学とは,脳損傷が原因で引き起こされる高次機能(知覚,記憶,思考など)の障害と,脳の損傷部位とを対応させることによって,その神経学的基盤を解明しようとするもの,と要約できます.その背景には,現代社会における脳科学の進展,すなわち「心は脳の働きによる」という理解が一般的になったことが指摘できます.編者の利島先生も「脳科学と心理学とのハイブリッド学」とよんでいます(「まえがき」より).
脳科学の進展はめざましく,脳と心の関係を解明しようとする領域は,研究者のみならず多くの人々を魅了してきています.心理学教育においても,脳の解剖や生理学への理解が不可欠となってきています.ただ,日本においては,神経内科など医学領域の研究者や臨床医により担われていたこともあり,心理学教育への神経心理学の知見の浸透は十分とは言えませんでした.しかし,心理学者が多様な臨床の場において,より積極的な役割を果たそうとする時,こうした知識はますます必要となってくることでしょう.
本書では,脳理解の基礎的対象やアプローチに関する実験神経心理学や,高次脳機能障害による障害者の行動理解やアセスメント法などの臨床神経心理学に関する基礎知識まで扱われており,神経心理学が扱う広範な課題を,初学者にも抵抗のない形で学んでもらえるよう配慮されています.学部から大学院までの心理学専攻の学生や研究者に加えて,言語聴覚士,心理技術者などの幅広く現場の人々にも手に取りやすいものになっています.
目次
1. 神経心理学の潮流
1.1 脳と心の関係を考える研究史
1.2 現代脳研究の展開
1.3 神経心理学とは何か
1.4 これからの神経心理学
2. 脳の構造と機能
2.1 脳の構造
2.2 大脳半球の構造
2.3 脳幹の構造
3. 感覚・知覚の神経心理学的障害
3.1 感覚・知覚の機能とは
3.2 視覚の神経学的基盤
3.3 視覚の神経心理学的障害
3.4 聴覚の神経学的基盤
3.5 聴覚の神経心理学的障害
3.6 体性感覚の神経学的基盤
3.7 体性感覚の機能障害
3.8 味覚の神経学的基盤と機能障害
3.9 嗅覚の神経学的基盤
4. 認知と注意の神経心理学
4.1 種々の対象認知障害
4.2 種々の注意障害
5. 言語の神経心理学
5.1 脳と言語システム
5.2 失語症状と脳の損傷部位
5.3 失語症検査
5.4 失語症とリハビリテーション
6. 記憶と高次脳機能の神経心理学
6.1 記憶の神経心理学
6.2 遂行機能障害と前頭葉の機能
6.3 日常活動に現れる行為の障害
6.4 高次脳機能"という用語について
7. 情動の神経心理学
7.1 情動にかかわる脳の構造と機能
7.2 気分・感情の障害と神経心理学
7.3 脳機能障害への臨床心理学的アプローチ
8. 発達と老化の神経心理学
8.1 発達神経心理学とは
8.2 心の成長と老化の基盤としての脳
8.3 心の発達を支える脳
8.4 脳機能の障害と発達
8.5 発達の神経心理学的評価(発達検査)
8.6 脳の老化と心理機能
8.7 痴呆の神経心理学的検査
8.8 おわりに
9. 神経心理学的リハビリテーション
9.1 はじめに
9.2 神経心理学的リハビリテーションとは
9.3 神経心理学的リハビリテーションを実施する前に
9.4 神経心理学的リハビリテーションの実際
9.5 心理学的手法を取り入れた神経心理学的リハビリテーション
事項索引
人名索引
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執筆者紹介
【編集者】利島 保
【執筆者(執筆順)】利島 保,堀 忠雄,田谷勝夫,柴崎光世,吉畑博代,宮森孝史,鈴木伸一,近藤武夫,橋本優花里