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内容紹介
《本書は『炭素の事典』(2007年刊)を底本として刊行したものです》 幅広く利用されている炭素について,いかに身近な存在かを明らかにすることに力点を置き,平易に解説。
編集部から
焼き肉の炭火焼き,昔の火元である火鉢の炭・現在の石油,鉛筆の芯,地球温暖化での二酸化炭素,ゴルフシャフトの炭素繊維,文化遺産年代測定のC14,そして日本では発掘されていない唯一の鉱石であるダイヤモンドなど,炭素関連の話題は欠くことがありません。
そもそも,「電子材料HB」を企画したときに,各章が1冊の本になり得ないかを考え,即座にカーボンが興味を引いたのが発端でした。 非常に身近であるという意味で,対象とする読者も高校生よりの一般人も包含すべきではないか,というところから編集会議でも議論され,化学式がやたら出てくるような学術専門事典には背を向けることにしました。炭素はその柔軟性から新たな物質を作ることが容易であり,強度性も兼ね備えていることからスペースシャトルの耐熱タイルへの応用も実現しています。
地球温暖化の源でもある二酸化炭素は,炭素循環という地球規模の問題でもあり,未来の地球の在り方を左右しかねない一大要素としてクローズアップされています。これも「地球環境HB」の企画に携わった際にインプットされたものです。
というわけで,化学に関して門外漢だった私ですが,炭素に関するイメージが膨らんだ結果,今回の事典となったわけです。
「眼の事典」などを参考に,文化的な側面も織り込みながら素人でも読みこなせる記述内容,との要望に編集の先生方の賛同を得,本邦初となる構成・目次立ての構築に尽力していただき,おもしろい話題をコラムの形で取り入れるよう執筆の先生方にもお願いしました。たとえば,「木炭の効能」では,木炭の粉末を食す豚への効果,炭火焼きが美味しい理由から一層のこと鍋ごと自体変えてしまおう,とか,のお話しも掲載されています。また,新燃料の開発といった堅い話ではありますが重要な技術も言及されています。
という訳で,理学書のハンドブックとしては異彩を放つものですが,是非,炭素の奇才振りを実感していただければと思っています。(田村)
目次
1. はじめに
1.1 炭素の特徴
1.1.1 元素としての特徴
1.1.2 存 在
1.2 炭素の用途
1.2.1 単体の用途
1.2.2 化石燃料としての用途
1.3 炭素利用の歴史
1.3.1 エネルギー源としての炭素利用の歴史
1.3.2 機能材料としての炭素利用の歴史
2. 炭素の科学
2.1 炭素原子の性質
2.1.1 一般的特性
2.1.2 炭素原子の物理特性
2.1.3 同 位 体
2.2 同 素 体 60
2.2.1 ダイヤモンド
2.2.2 グラファイト
2.2.3 フラーレンおよびナノチューブ
2.2.4 アモルファス炭素
2.2.5 そ の 他
2.3 炭素材料の分類
2.3.1 化学結合による分類(カーボンファミリー)
2.3.2 炭素材料開発の三つの期間と3種の炭素材料
2.3.3 作製法による分類
2.4 グラファイト層間化合物
2.4.1 グラファイトの性質
2.4.2 グラファイト層間化合物の構造
2.4.3 グラファイト層間化合物のつくり方
2.4.4 グラファイト層間化合物の電子構造と電子的性質,磁気的性質
2.4.5 層間化合物の気体吸収
2.5 金属内包フラーレン
2.5.1 金属内包フラーレンとは
2.5.2 金属内包フラーレンの生成・単離
2.5.3 金属内包フラーレンの分子構造
2.5.4 クラスター内包フラーレン
2.5.5 孤立五員環則を破る金属内包フラーレン
2.5.6 金属内包フラーレンの物性
2.5.7 金属内包フラーレンの応用
3. 無機化合物
3.1 一酸化炭素
3.1.1 一酸化炭素の歴史
3.1.2 一酸化炭素の構造
3.1.3 一酸化炭素の光化学
3.1.4 一酸化炭素の性質
3.1.5 一酸化炭素の生理作用および中毒
3.1.6 大気中一酸化炭素の発生源と消失過程
3.1.7 大気中一酸化炭素の濃度分布
3.1.8 大気環境における一酸化炭素の重要性
3.1.9 大気中一酸化炭素濃度の測定法
3.2 二酸化炭素 [
3.2.1 二酸化炭素の概要と用途
3.2.2 二酸化炭素の歴史
3.2.3 全世界における二酸化炭素の排出量
3.2.4 二酸化炭素の構造
3.2.5 二酸化炭素の性質
3.2.6 二酸化炭素の水溶性
3.2.7 液化炭酸
3.2.8 ドライアイス
3.2.9 二酸化炭素の分光学的な性質
3.2.10 超臨界二酸化炭素
3.2.11 二酸化炭素の同位体
3.2.12 二酸化炭素濃度の測定法
3.2.13 二酸化炭素中毒
3.2.14 炭酸同化作用(光合成)
3.2.15 大気中二酸化炭素と地球温暖化
3.2.16 二酸化炭素の収支
3.2.17 二酸化炭素濃度の将来予測と温暖化への影響
3.3 炭 酸 塩
3.3.1 炭酸塩の歴史
3.3.2 炭酸塩の種類
3.3.3 炭酸塩の構造
3.3.4 炭酸塩の性質
3.3.5 炭酸塩の用途
3.3.6 炭酸塩の生理作用
3.3.7 溶融塩(燃料電池)
4. 有機化合物
4.1 石 炭
4.1.1 石炭の歴史
4.1.2 石炭の種類
4.1.3 石炭の生成機構
4.1.4 石炭の構造
4.1.5 石炭の性質
4.1.6 石炭の採掘(採炭)
4.1.7 石炭の利用(石炭利用技術炭)
4.1.8 酸 性 雨
4.2 コークス
4.2.1 コークスの用途と役割
4.2.2 コークス製造の歴史
4.2.3 コークス製造法
4.2.4 コークスの組織
4.2.5 石炭乾留時のコークス化機構
4.2.6 コークスの品質評価指標
4.2.7 非微粘結炭多量使用技術の開発
4.2.8 世界における新コークス製造技術の開発動向
4.2.9 日本の次世代コークス製造技術の開発状況
4.2.10 石油コークス
4.3 コールタール
4.3.1 コールタールの歴史
4.3.2 コールタールの製造
4.3.3 コールタールの性状・成分
4.3.4 コールタールの役割・利用
4.3.5 コールタールから得られる製品
4.3.6 コールタールおよびタール製品の社会的問題
4.4 天然ガス
4.4.1 天然ガスの定義
4.4.2 天然ガス鉱床の分類,資源量と分布
4.4.3 天然ガスの起源
4.4.4 天然ガス鉱床の成因
4.4.5 ガスハイドレート
4.4.6 ガスハイドレートの基礎物性
4.4.7 海底および永久凍土地帯のメタンハイドレート
4.4.8 ガスハイドレードに関わる研究開発動向
4.4.9 天然ガスのクリーン燃料としての利用
4.4.10 化学原料としての天然ガスの利用
4.5 石 油
4.5.1 石油の組成
4.5.2 石油の物理的性質
4.5.3 石油の生成
4.5.4 石油システム
4.5.5 石油の埋蔵量
5. 炭素の応用
5.1 素材としての利用
5.1.1 カーボンブラック
5.1.2 黒鉛電極
5.1.3 炭素繊維
5.1.4 高密度等方性炭素材
5.1.5 ガラス状炭素
5.1.6 医療用炭素
5.1.7 生物活性炭
5.1.8 水中微生物固定用炭素
5.1.9 土壌改良用炭素
5.2 ナノ材料としての利用
5.2.1 ナノカーボン
5.2.2 カーボンナノチューブ―ナノ構造制御法への期待
5.2.3 高性能リチウムイオン電池用ボロン添加グラファイト
5.2.4 多孔性ナノカーボンと電気二重層キャパシターへの応用
5.2.5 ナノカーボン応用の今後
5.3 吸着特性
5.3.1 吸着現象と吸着に働く力
5.3.2 活性炭の構造
5.3.3 活性炭の吸着特性
5.3.4 活性炭の用途
5.3.5 木炭類の製造法と吸着特性
5.3.6 その他の吸着炭
5.4 導電体・半導体
5.4.1 カーボンナノチューブ
5.4.2 ダイヤモンド半導体
5.4.3 ダイヤモンド電子デバイス
5.5 蓄電池,燃料電池,電刷子
5.5.1 蓄電池と蓄電器
5.5.2 燃料電池と炭素材料
5.5.3 電 刷 子
5.6 複合材料
5.6.1 炭素繊維強化プラスチック
5.6.2 炭素繊維強化炭素複合材料
5.6.3 炭素/セラミックス系複合材料
6. 環境エネルギー関連科学
6.1 新 燃 料
6.1.1 石炭のガス化
6.1.2 ソーラーハイブリッド燃料
6.1.3 バイオマス燃料
6.2 地球環境
6.2.1 炭素循環
6.2.2 二酸化炭素隔離
6.3 処理技術
6.3.1 炭素と水浄化技術
6.3.2 有機体炭素と汚染除去
索 引
「コラム」
木 炭
現代の製鉄法とたたら製鉄
鉛 筆
イオン分子反応と星間分子の進化
14Cを使った年代決定
植物による光合成時の炭素同位体分別
安定同位体比測定技術
ダイヤモンド合成:モアッサンの挑戦
グラフェンと二次元グラファイト
高熱伝導性グラファイトシート
ナノチューブが開く未来
ダイヤモンドライクカーボン
地質学からみたカルビン
宇宙のカルビン
金色のグラファイト層間化合物と超伝導
金属内包フラーレンの将来
ジョゼフ・プリーストリー
マグロの色と一酸化炭素
半導体ガスセンター
超臨界抽出によるデカフェコーヒー
用語の混乱:石灰とは何?
化学分析と炭酸塩
水の硬度
カルサイトの複屈折
体内でつくられる炭酸塩
石炭組織学
中国の石炭液化技術の実用化
成型コークス製造法
コークス炉を活用した廃プラスチックのリサイクル技術
次世代コークス製造プロセスの開発
石油コークスの利用方法
火山岩をレザバーとする天然ガス鉱床
自然界のメタンハイドレート
熱水性石油
ピークオイル
木炭の効能
カーボンナノチューブとリチウムイオン電池・電気二重層キャパシター
炭素と金属の親密さと新しい炭素材料
世界最初のジェット旅客機,コメットの墜落事件
豊富な褐炭からジメチルエーテルなどの液体燃料生産へ
木質系バイオマスからの液体燃料製造
土壌は炭素の蓄積場所
CO2回収・貯留技術に関する国際的な動向
バイオマスの中の炭素
自然の仕組み
竹炭の用途
執筆者紹介
【編集者】
伊与田正彦,榎敏明,玉浦裕
【執筆者(執筆順)】
西長亨,伊与田正彦,遠藤泰樹,榎敏明,奈良岡浩,平田敦,鏑木裕,坂東俊治,稲垣道夫,木島正志,篠原久典,伊藤靖浩,梶井克純,加藤俊吾,相沢省一,野村正勝,加藤健次,奥山公平,吉田忠,坂田将,海老沼孝郎,張戦国,加藤進,大谷朝男,遠藤守信,竹内健司,林卓哉,Y. J. Kim,Y. A. Kim,柳澤隆,安部郁夫,津川和夫,長谷川雅考,古賀義紀,白石壮志,尾崎純一,森田登,松井醇一,福田博,安田榮一,田邊靖博,赤津隆,片山優久雄,玉浦裕,美濃輪智朗,木庭啓介,平井秀一郎,末包哲也,立本英機