臨床試験の事典

丹後 俊郎松井 茂之(編)

丹後 俊郎松井 茂之(編)

定価 16,500 円(本体 15,000 円+税)

A5判/592ページ
刊行日:2023年01月01日
ISBN:978-4-254-32264-4 C3547

ネット書店で購入する amazon e-hon 紀伊國屋書店 honto Honya Club Rakutenブックス くまざわ書店

書店の店頭在庫を確認する 紀伊國屋書店

内容紹介

◆臨床試験の研究デザイン,実施方法,関連法規,疾患領域別の動向,解析手法や統計学的手法などに関する重要なキーワードを見開き2~4頁で簡潔に解説。
◆豊富な事例とともに臨床試験の全体像を理解できる1冊。

編集部から

序文より

 これまで人類は疾患を含む様々な健康問題と対峙するために様々な医療技術(予防法,診断法,治療法)を開発してきた。ヒトを対象とした実験的研究,すなわち,臨床試験は,医療技術の有効性と安全性に関する最良のエビデンスを提供するものであり,医療技術の確立での拠り所としてこれまで貢献してきた。最近の例では,世界に大きな混乱をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID 19)に対するワクチンや治療法開発の臨床試験が記憶に新しい。その一方で,これまでの日本発のエビデンスは欧米諸国と比べて少ないことに注意が必要である。
 臨床試験を科学的,倫理的に,さらに,限られた医療資源のもとで適切に実施することは決して容易ではない。むしろ,多くの場合,困難である。根底には,きわめて複雑な生体機序と大きな個体差がある。必然的に,大きな不確実性を前提とした科学的推論が必要となるが,その枠組みを与えるのが統計的推論であり,これは医学統計学(Medical Statistics),あるいは,生物統計学(Biostatistics) として今日まで体系化されている。
 本書は,臨床試験のデザイン,統計解析手法,統計数理の方法論,臨床試験の実務,疾患領域別の展開も網羅した『臨床試験の事典』として編纂された。最新の臨床科学,医学統計学の発展を踏まえて,重要度の高い合計182 項目から構成される。事典にふさわしく,臨床試験の実務家がその都度検索し,理解しやすいよう,各項目は数ページの読み切りとし,簡潔でわかりやすい解説を目指した。その一方で,項目間の連携にも配慮した執筆者の編成と項目立てにより,医学・保健科学,統計科学の学部生・大学院生,さらには広く医師,医学・健康科学分野等の研究者が臨床試験を体系的に理解する際にも役立つものと期待している。
 本書は,臨床試験の方法論とその実践に焦点をあてた本邦初の事典であり,執筆者は,医学統計学,統計科学,臨床科学の最前線で活躍している研究者・実務家が多く含まれる。網羅するトピックスの広さ,理論と実践のバランスなどにおいて海外の臨床試験関係の書物と比べてもユニークなものであると自負している。
 今後の我が国における臨床試験の質の向上,ひいては,医療技術開発の推進,臨床研究の発展に貢献できればと願っている。
 最後に,ページ数の制限を含む厳しいお願いにもかかわらず快くご執筆いただいた執筆者の先生方のご協力,朝倉書店編集部の方々のご尽力に心からお礼を申し上げたい。
 2022年11月
 丹後俊郎 松井茂之

目次

【第I部 臨床試験の計画と実施】
◆第1章 臨床試験概論
1. 臨床試験概論
2. 医薬品等の臨床開発の流れ
3. 臨床試験のタイプ
4. 臨床試験の科学性と倫理性
5. 臨床試験の法的規制
6. 臨床研究法,臨床研究の各種規範
7. 臨床試験の登録制度

◆第2章 臨床試験の計画における基本概念
8. バイアスと偶然的変動
9. 標的集団の設定
10. エスティマンド

◆第3章 無作為化比較試験 (RCT) の原理
11. 無作為化比較試験とは?
12. 無作為化の重要性と倫理性
13. 試験の実施に伴うバイアス

◆第4章 臨床試験の体制と実務
14. 臨床試験の体制・組織
15. プロトコル
16. 統計解析計画書
17. 登録と割付
18. データマネジメント

◆第5章 臨床試験の基本的デザイン
19. 実験計画の基本概念
20. 臨床試験デザイン概論
21. クロスオーバーデザイン
22. 要因デザイン
23. 治療の中止・変更を伴うデザイン

◆第6章 開発段階に応じた臨床試験:早期の探索的試験
[第I相試験]
24. 第I相試験の目的
25. 健常人を対象とした試験デザイン
26. 患者を対象とする第I相試験のデザイン
27. CRMとモデルに基づく試験デザイン
28. 母集団薬物動態解析
29. モデリング&シミュレーション
[第II相試験]
30. 第II相試験概論
31. Proof of Concept(PoC) 試験
32. 第II相用量範囲試験
33. 用量反応性試験
34. 用量反応性(傾向性)の検定
35. 検定に基づく用量選択
36. 用量反応性の推定と用量選択
37. 多段階デザイン
38. ランダム化第II相試験
39. シームレス第 I/II相,第 II/III相試験
40. ベイズ流試験デザイン

◆第7章 開発段階に応じた臨床試験:検証的試験
41. 第III相臨床試験概論
42. 非劣性試験と優越性試験,非劣性マージン
43. 基本的な無作為化の方法
44. 無作為化に基づく推論
45. ベースラインの調整
46. ベースラインの調整法
47. サブグループ解析
48. 多施設共同試験における施設間差の評価
49. サロゲートエンドポイント
50. 有害事象の解析
51. 有害事象の発現状況の要約法

◆第8章 目標症例数の設計
52. 目標症例数の設計
53. 母平均の差の比較
54. 順序カテゴリカルデータの比較
55. 母比率の比較
56. 傾向性の検出
57. 再発事象の発現率の比較
58. 生存時間の比較
59. クロスオーバー試験
60. クラスター無作為化試験
61. 経時的繰り返し測定デザイン

◆第9章 群逐次デザイン
62. 群逐次デザイン総論
63. α 消費関数
64. 適応的デザイン
65. サンプルサイズ再設定
66. ベイズ流中止基準
67. 適応的患者選択
68. 適応的治療群選択
69. 推定バイアスの補正

◆第10章 臨床検査
70. 精度管理
71. 測定法の比較
72. 基準範囲の推定
73. 個人差の推定

◆第11章 精密医療に向けた臨床試験
74. 予測マーカーに基づく臨床試験
75. マスタープロトコルに基づく臨床試験
76. バスケット試験デザイン

◆第12章 その他の臨床試験
77. トランスレーショナルリサーチ
78. 医療機器の開発
79. 診断法の臨床試験

◆第13章 疾患領域別の臨床試験
80. 循環器領域
81. がん領域
82. 内分泌
83. 感染症領域
84. 消化器領域
85. 糖尿病予防のためのライフスタイル改善プログラム

◆第14章 薬剤疫学研究
86. 薬剤疫学の基本概念(総論)
87. 医薬品の製造販売後調査制度
88. 医療情報データベース
89. 薬剤疫学の研究デザイン
90. 薬剤疫学における交絡調整

【第II部 臨床試験の統計解析】
◆第15章 記述統計
91. データの種類と表現
92. 要約統計量
93. データの正規性
94. データ等の変換
95. 関連性の記述
96. イベント発生に関する割合・率の指標と推定
97. 治療効果の指標

◆第16章 計量データの解析
98. t検定と区間推定
99. Wilcoxon順位和検定
100. 多群比較検定

◆第17章 計数データの解析
101. 割合の二群比較解析
102. 割合の多群比較解析と傾向性検定
103. 対応のある割合の比較
104. r× c表の解析
105. 率の二群比較解析

◆第18章 クロスオーバーデザインの解析
106. 計量データの解析(2群2期)
107. 計量データの解析(2群 m期)
108. 2値データの解析(2群2期)

◆第19章 予後・交絡因子の調整,層別解析
109. van Elteren検定
110. Mantel Haenzel検定
111. Yanagawa Tango Hiejimaの検定
112. 共分散分析
113. ロジスティック回帰モデル
114. ポアソン回帰モデル
115. 比例オッズモデル

◆第20章 生存時間解析
116. 生存時間解析総論
117. 生存関数の Kaplan-Meier推定
118. 生存関数の差の logrank検定
119. Cox比例ハザードモデル
120. 比例ハザード性が成り立たない際の対処
121. 制限付き平均生存期間
122. 生存関数がクロスする場合
123. 競合リスクがある場合の累積発生関数(率)の推定法
124. 競合リスクがある場合の累積発生関数(率)の差のGrayの検定
125. 競合リスクがある場合の Fine-Grayの回帰モデル
126. 区間打ち切りデータ解析
127. 再発事象データの解析

◆第21章 経時的繰り返し測定データ解析
128. 経時的繰り返し測定デザイン総論
129. 分散分析モデル
130. 線形混合効果モデル
131. 混合効果ロジスティック回帰モデル
132. 混合効果ポアソン回帰モデル
133. 一般化推定方程式による周辺モデル
134. 個人の反応プロファイルを分類する潜在プロファイルモデル
135. 非線形混合効果モデル

◆第22章 同時モデリング
136. 経時測定テータと生存時間テータの同時モデリング
137. 再発事象データと生存時間の同時モデリング

◆第23章 非劣性試験の統計解析
138. 母平均の比較
139. 母比率の比較
140. 生存時間の比較
141. 複数の評価者で評価する場合
142. プラセボ対照を追加した非劣性試験

◆第24章 クラスター無作為化デザインの解析
143. クラスター無作為化デザイン
144. クラスター内相関
145. 相関のある連続データの平均値の比較
146. 相関のある連続データの回帰モデル
147. 相関のある二値データの割合の比較
148. 相関のある二値データの回帰モデル
149. Stepped-wedgeクラスター無作為化デザイン

◆第25章 欠測データを含む不完全データの解析
150. 臨床試験におけるデータの欠測:概論
151. データ欠測のメカニズム
152. 尤度に基づく欠測データの解析
153. 欠測データの補完
154. 欠測データに対する逆確率重み付け法
155. MNARモデルと感度解析

◆第26章 統計解析の多重性
156. 多重性調整
157. 多重比較と多重対比検定 (1) パラメトリックな場合
158. 多重比較と多重対比検定 (2) ノンパラメトリックな場合
159. Bonferroni法,Sidak法およびSimes法
160. 閉検定手順
161. 修正 Bonferroni法
162. 固定順序法とフォールバック法
163. ゲートキーピング法
164. グラフィカル法

◆第27章 因果推論
165. 反事実因果モデル
166. 交絡
167. 層別による交絡調整
168. 回帰モデル解析による交絡調整
169. 傾向スコア
170. 操作変数法
171. IPW法

◆第28章 メタ・アナリシス
172. メタ・アナリシス総論
173. メタ・アナリシスの統計モデル
174. メタ・アナリシス 平均値の差
175. メタ・アナリシス2×2分割表
176. 個人データを利用するメタ・アナリシス
177. メタ・アナリシスに伴うバイアスとその対処法
178. 多変量メタ・アナリシス
179. ネットワーク・メタ・アナリシス

◆第29章 臨床試験に関連する論文の書き方
180. 臨床試験結果の報告 (CONSORT)
181. メタ・アナリシスの報告 (PRISMA)
182. P値と統計解析の報告の新しいガイドライン

索 引

執筆者紹介

■ 編集者
丹後俊郎   医学統計学研究センター
松井茂之   名古屋大学 大学院医学系研究科

■ 執筆者(五十音順,所属は刊行時)
井桁正尭   兵庫医科大学大学院医学研究科
猪原登志子  京都府立医科大学附属病院臨床研究推進センター
江本 遼   名古屋大学大学院医学系研究科
大北宗由   名古屋大学大学院医学系研究科
大庭幸治   東京大学大学院情報学環
尾上剛史   名古屋大学医学部附属病院
小山田隼佑  特定非営利活動法人JORTCデータセンター
五所正彦   筑波大学医学医療系
佐伯浩之   PDRファーマ株式会社研究開発本部
佐藤宏征   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
篠崎智大   東京理科大学工学部
柴田大朗   国立研究開発法人国立がん研究センター研究支援センター
進藤有一郎  名古屋大学医学部附属病院
寒水孝司   東京理科大学工学部
大門貴志   兵庫医科大学大学院医学研究科
田栗正隆   東京医科大学医療データサイエンス分野
田中司朗   京都大学大学院医学研究科
丹後俊郎   医学統計学研究センター
手良向聡   京都府立医科大学大学院医学研究科
西川正子   東京慈恵会医科大学臨床研究支援センター
錦見満暁   広島大学病院救急集中治療科
西田一貴   名古屋大学医学部附属病院
野中孝浩   大阪公立大学大学院医学研究科
長谷川貴大  塩野義製薬株式会社解析センター
長谷川千尋  MSD株式会社グローバル研究開発本部
服部 聡   大阪大学大学院医学系研究科
飛田英祐   大阪大学大学院医学系研究科
平川晃弘   東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
冨金原悟   小野薬品工業株式会社データサイエンス部
藤澤洋徳   統計数理研究所数理・推論研究系
船渡川伊久子 統計数理研究所データ科学研究系
松井茂之   名古屋大学大学院医学系研究科
宮井雄基   名古屋大学医学部附属病院
森川敏彦   前久留米大学バイオ統計センター
森田智視   京都大学大学院医学研究科
山岡和枝   帝京大学大学院公衆衛生学研究科

関連情報

ジャンル一覧

ジャンル一覧

  • Facebook
  • Twitter
  • 「愛読者の声」 ご投稿はこちら 「愛読者の声」 ご投稿はこちら
  • EBSCO eBooks
  • eBook Library