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天然物の全合成 ―華麗な戦略と方法―
竜田 邦明(著)
内容紹介
本書は,著者らがこれまでに完成した約85種の天然物の全合成を中心に解説。そのうち80種については世界最初の全合成であるので,同一あるいは同様の天然物を他の研究者が追随して報告した全合成研究もあわせて紹介し,相違も明確にした。
編集部から
本書は,従来の成書とは趣を異にした,有機合成化学の“力作”です。従来のテキストは,反応別あるいは反応様式別に論ずるものが多いのですが,本書ではそのスタイルを意識的に避け,最初から天然生理活性物質(天然物)を対象化合物として選び,それらの全合成(入手可能な最小ユニットから天然物を合成すること)を紹介しています。
その紹介ですが,著者らがこれまでに完成した85種以上の天然物の全合成が中心。とくに,そのうち約80種については“世界最初の全合成”というスゴ物。同一あるいは同様の天然物を他の研究者が追随して報告した全合成研究も併せて紹介することにより,使用された多くの反応のみならず合成概念,戦略,方法論などの相違も明確になっています。
著者は言います──そこには優劣はなく,ただ,各研究者の個性の傑出した全合成という作品があるだけである。それぞれの優れた哲学が浮き彫りになるので,それを真摯に学べばよい──。
貫禄ですね。ついでに著者の竜田先生について少しご紹介します。大阪生まれの65歳。渡辺格さんにあこがれて慶応の医学部に入ったのですが,残念なことにその当時の日本の大学ではまだ分子生物学を研究する環境が整っていなかったので,2カ月後工学部に“転部”,抗生物質の世界的権威である梅澤純夫先生のもとで「夢のカナマイシン」の絶対構造を決定し,全合成も完成して工学博士号を取得。1973─75年にはハーバード大学にポスドクとして留学し,ウッドワード先生(1965年ノーベル化学賞)のもとで研究の哲学を学び,帰国後の85年には慶應大・理工学部の教授に。そして請われて93年には早大に“転校”(K→Wの人事は初)。2002年には紫綬褒賞を受けている,有機合成化学分野の大物。現在,早稲田大学大学院理工学研究科長も務めているエネルギッシュな方です。 (川端)
【書評】
「化学 2006年9月号」(化学同人)の「化学の本だな」欄で、
鈴木啓介氏によって「・・・合成が進み構造が目標の天然物に似てくるほど,うまくいくはずの反応がなぜか進行せず,“死の谷”に直面する。ところが,著者はそうした窮地を巧みに回避し,四大抗生物質を含む85以上の天然物合成を完成させる偉業を成し遂げてきた。しかも,そのほとんどがfirst total synthesisiである。本書は,その珠玉の業績集である。・・・」と、ご紹介いただきました。
【書評】
「有機合成化学協会誌 2006年8月号」「書評欄」で、
只野金一氏により「・・・有機合成にかかわる産官学の研究諸氏,そして学生諸君が本書を手元におき,天然物合成と自らの研究のかかわりを絶えず意識して欲しいと願う。・・・」と、ご紹介いただきました。"
【藤原賞を受賞】
著者竜田邦明氏が,2008年度の「藤原賞」を,天然物質を一からつくる「全合成」の第一人者として,創薬研究などの発展に貢献したとして,受賞しました。
目次
略語表
試薬表
A26771B
AB3217-A
Allosamizolines
Apramycin and Saccharocin
Arphamenine A
Asterriquinone and Demethylasterriquinone
Azepinomycin and Itsβ-D-Ribofuranoside
BE-54238B
Calbistrin A
Deacetyl-Caloporoside Derivatives
Carbomycin, Leucomycin A3 (Josamycin) and their Aglycones
Cochleamycin A
Concanamycins
Coriolins
Cyclophellitol
Elaiophylin (Azalomycin B)
4-O-(4-O-Acetyl-α-L-rhamnopyranosyl)-ellagic acid
Erbstatin
ES-242-4 and ES-242-5
Gualamycin
Herbimycins
Hirsutenes
Indisocin and N-Methylindisocin
Isoretronecanol
Kanamycin A, B and C
Glyoxalase I Inhibitor and ()-KD16-U1
LL-Z-1640-2
Luminacins (UCS15A, SI4228)
Lymphostin
Maniwamycin A and B
Medermycin and Analogue of Medermycin
MS-444
Nagstatin
Nanaomycins and Kalafungins
Napyradiomycin A1
Neamine
( )- and (-)-Neopyrrolomycins
Oleandomycin and Oleandolide
PC-3 (SF2420B) and YM-30059
(-)-PF1092A, B, C and Analogs
(-)-PF1163A and B
Pyralomicin 1c and 2c
Pyridomycin
Pyrizinostatin
Quinolactacin B
Rifamycins
(-)-Rosmarinecine
Sideroxylonal
Terpestacin
Tetracyclines
Tetrodecamycin
Thienamycin
Trehalosamines
Trichostatins
Tylosin
UCE6
Valienamine and Validamine
Xanthocillin X Dimethylether
YM182029 and AM6898D
あとがき
索 引
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