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放射化学の事典
日本放射化学会(編)
内容紹介
放射性元素や核種は我々の身の周りに普遍的に存在するばかりか,近代の科学や技術の進歩と密接に関わる。最近の医療は放射性核種の存在なしには実現しないし,生命科学,地球科学,宇宙科学等の基礎科学にとって放射化学は最も基本的な概念である。本書はキーワード約180項目を1~4頁で解説した読む事典。〔内容〕放射化学の基礎/放射線計測/人工放射性元素/原子核プローブ・ホットアトム化学/分析法/環境放射能/原子力/宇宙・地球化学/他
編集部から
医療やエネルギーだけでなく,生命科学,環境科学,地球・宇宙科学などの基礎科学として重要な放射化学について,約180の項目を1~4頁で平易に解説.
人々の関心の高い項目も取り上げ,現代人の一般常識となるように解説.
○本書「序」より
「日本における核化学・放射化学の歴史は20世紀初期に遡ることができるが,研究者が組織的にまとまり,分野を意識した研究活動を始めるのは第二次世界大戦以降のことである.この時期は戦後の復興期にあたり,原子力への興味・期待もこうした動きを後押ししたことは間違いない.……核化学・放射化学は化学に根ざした基礎科学的探求に加えて,周辺分野への波及も大きく加速した.そうした周辺分野としては,地球・宇宙科学,環境科学,生命科学,医学・薬学等々,自然科学のほぼ全てに広がりをもつに至っている.
日本放射化学会が発足して20年が経過し,核化学・放射化学の基礎及びその周辺分野を網羅した事典の発刊が,日本放射化学会の会長,前会長(共に当時)の間で企画された.本書は日本放射化学会,およびその周辺の科学者の英知を結集して編纂されたもので,現時点でこの分野の最も新しく,信頼できる書であると自負している.……本書が放射線・放射能の正しい知識を持つための支えとなり,誤った知識をひとつでも修正することに寄与できれば企画編集した者として望外の幸せである.」
●放射線・放射能に関心をもつ方々
●原子力に関わる研究者・学生,技術者
●放射線を扱う医療・薬学の研究者・学生,技術者
●公共図書館・大学図書館
目次
内容目次
Ⅰ 放射化学の基礎
1. 核種・同位体・同重体
2. 素粒子
3. 原子質量単位と原子量
4. 原子核
5. 核構造
6. 原子核模型
7. 原子核と結合エネルギー
8. 魔法数の変化
9. 放射壊変
10. α改変
11. β改変
12. γ改変
13. X(レントゲン)線
14. 放射平衡
15. 天然放射性核種
16. 【コラム】NEET
17. 【コラム】Be-7の半減期
18. 原子炉
19. 加速器
20. 核反応
21. 核分裂
22. 【コラム】対消滅,反物質
Ⅱ 放 射 線 計 測
1. 阻止能と飛程
2. 制動放射
3. 光電効果
4. コンプトン効果
5. 電子対生成
6. 放射線量
7. 線量計
8. 放射線の生物学的効果
9. ガイガー・ミュラー計数管
10. 気体放射線検出器
11. 半導体検出器
12. 固体シンチレーション検出器
13. 液体シンチレーション検出器
14. 固体飛程検出器
15. 【コラム】ルミネセンス法
16. スーパーカミオカンデ
Ⅲ 人工放射線元素
1. 核図表
2. テクネチウム,プロメチウム
3. 超ウラン元素
4. アクチノイドの概念
5. アクチノイドの固体化学
6. アクチノイドの溶液化学
7. 超アクチノイド元素
8. 超重原子核
9. 超アクチノイド元素の化学
10. 相対論効果
11. シングルアトム化学
12. 反跳分離法
13. 反超核分離装置
14. 同位体分離
15. 液相系迅速放射化学分離
16. 気相系迅速放射化学分離
17. RIビーム
18. イオントラップ
19. 【コラム】新元素発見にまつわるエピソード
20. 【コラム】新元素の承認
Ⅳ 原子核プローブ・ホットアトム化学
1. 物質化学とメスバウアー分光法
2. メスバウアー分光法の材料科学への応用
3. インビーム・メスバウアー分光法
4. 核共鳴散乱
5. 陽電子消滅角度相関
6. 陽電子消滅寿命
7. ミュオンスピン回転・緩和・共鳴法
8. 核磁気共鳴分光NMR
9. β線核磁気共鳴分光
10. γ線摂動角相関
11. エキゾチックアトム
12. ホットアトム化学
13. 【コラム】火星に水があった
Ⅴ 核・放射化学に関連する分析法
1. 中性子放射化分析
2. 即発γ線分析
3. 多重γ線分析
4. 光量子放射化分析
5. 荷電粒子放射化分析
6. γ線スペクトロメトリ
7. k₀法,コンパレーター法
8. 荷電粒子励起X線分析PIXE
9. 加速器質量分析
10. X線吸収微細構造法(XAFS)
11. 蛍光X線分析XRF
12. アクチバブルトレーサー
13. 中性子散乱・中性子回折
14. フィッショントラック
15. 中性子ラジオグラフィ
16. 遅発中性子分析
17. 放射化学分析
18. 同位体希釈分析
19. 不足当量法
20. かぐや(SELENE)γ線分光
21. ミュオンを利用した元素分析
22. 加速器中性子源利用分析
Ⅵ 環 境 放 射 能
1. 環境中の放射非平衡
2. 大気圏内核実験とフォールアウト
3. 平均滞留時間
4. バックグラウンド放射能
5. 原子力施設と放射性核種
6. 環境放射線モニタリング
7. 生物濃縮
8. 自然被ばく線量
9. 環境移行モデル
10. 放射線および安定同位体の環境移動
11. NORM
12. 環境放射能測定法
13. ラドン,トロン
14. トリチウム(三重水素)
15. 炭素-14
16. クリプトン-85
17. プルトニウム
18. 高自然放射線地域の住民の健康影響
19. 環境生物の放射線防護
Ⅶ 原子力と放射化学
1. 軽水炉の構造
2. 軽水炉における核反応と反応度制御
3. 次世代炉
4. 高温ガス炉
5. 加速器駆動核変換システム
6. 核融合炉
7. ITER
8. 材料放射化
9. 水化学
10. ウラン,トリウム
11. 核燃料の化学
12. 使用済燃料
13. 湿式再処理
14. 乾式再処理
15. マイナーアクチノイドの分離と核変換
16. 放射性廃棄物
17. 安全評価と核種移行
18. 核種移行―収着,拡散
19. 核種移行―溶解度と熱力学
20. 核不拡散
21. 原子力の事故
22. 大規模放射性核種マップ
Ⅷ 宇宙・地球化学
1. 放射年代測定
2. 14C年代測定
3. 消滅放射性核種
4. 軽い元素の原子核合成
5. 重い元素の原子核合成
6. 二重β崩壊
7. 宇宙線
8. 引責の宇宙線照射年代
9. 空気シャワー
10. 核破砕反応
11. 同位体比測定
12. 【コラム】オクロ現象
13. 【コラム】X線CT@SPring-8
14. シンクロトロン放射光によるX線回折
Ⅸ 放射線・放射性同位元素の生命科学・医薬学への応用
1. マルチトレーサー
2. オートラジオグラフィー
3. 放射線生物作用
4. 放射線の生体への影響
5. 放射線ホルミシス
6. 粒子線治療
7. 放射性核種を用いた診断と治療Ⅰ
8. 放射性核種を用いた診断と治療Ⅱ
9. γ線カメラ
10. コンプトンカメラ
11. ホウ素中性子補足量法(BNCT)
12. イオンビーム育種
13. ラジオイムノアッセイ
14. 医薬品開発におけるRI利用
15. 【コラム】99Mo/99mTcの現状と89Sr,90Yの利用
16. 【コラム】植物のRIリアルタイムイメージング
Ⅹ 放射線・放射性同位体の産業利用
1. 原子力電池
2. 厚さ計
3. 火災報知器
4. イリジウム泉源
5. 非破壊検査
6. 放射線高分子グラフト
7. 放射線高分子架橋
8. 放射線分解
9. 放射線殺菌・滅菌
10. 芽止め照射
11. 害虫の不妊化駆除
12. 【コラム】放射能温泉
付 録
1.核化学・放射化学に関係するノーベル賞受賞者とその業績
2.安定核種の同位体存在度と原子質量
3.天然の放射壊変系列
4.おもな天然放射性核種
5.人工放射元素一覧
執筆者紹介
●編集責任者
海老原 充 首都大学東京大学院理工学研究科
永目諭一郎 日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター
●編集委員(五十音順)
石岡典子 日本原子力研究開発機構
榎本秀一 岡山大学
海老原充 首都大学東京
柿内秀樹 公益財団法人環境化学技術研究所
木村貴海 日本原子力研究開発機構
工藤久昭 新潟大学
久保謙也 .国際基督教大学
酒井陽一 大同大学
佐々木隆之 京都大学
篠原 厚 大阪大学
田上恵子 放射線医学総合研究所
永目諭一郎 日本原子力研究開発機構
羽場宏光 理化学研究所
日高 洋 広島大学
松尾基之 東京大学
三浦 勉 産業技術総合研究所計測標準研究部門
百島則幸 九州大学
山田康洋 東京理科大学
横山明彦 金沢大学
鷲山幸信 金沢大学