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元素大百科事典 (新装版)
渡辺 正(監訳)
内容紹介
すべての元素について,元素ごとにその性質,発見史,現代の採取・生産法,抽出・製造法,用途と主な化合物・合金,生化学と環境問題等の面から平易に解説。読みやすさと教育に強く配慮するとともに,各元素の冒頭には化学的・物理的・熱力学的・磁気的性質の定量的データを掲載し,専門家の需要に耐えるデータブック的役割も担う。“科学教師のみならず社会学・歴史学の教師にとって金鉱に等しい本”と絶賛されたP. Enghag著の翻訳。日本が直面する資源問題の理解にも役立つ。
編集部から
本書は1998~2000年にスウェーデンで出版された全3巻(訳せば「地球上の元素と発見物語」)の翻訳です。原著はスウェーデン語ですが,2003年に英語版が出ているので,翻訳は英語版によっています。英語版にあたり著者は内容を再編集し,元素の物理化学データ類を新たに追加し,書名も“Encyclopedia of the Elements”と百科事典に変更しています。
内容は,全元素についてその発見史,現代の採取・生産法,抽出・製造法,用途と化合物,生化学と環境問題などを解説したものですが,驚くべきは800名を超える人物が登場することです。しかも化学者だけではありません。歴史上の人物が多彩な書物(時には聖書やギリシャ叙事詩),雑誌,手紙,日記からの引用とともに描かれています。ちょっとしたエピソード(歴史や文化)とともに元素の様々な知識を得ることができる本書は,まさに楽しいエッセイが多数集まった本と言えるかもしれません。読者はどのページを開いても,歴史上の一場面に居合わせたかのような興奮を覚えることができるでしょう。(今年,世界遺産に認定された「石見銀山」,ピーク時には世界全体の1/3を産出し西欧でも有名になった石見の記載がないのはちょっと残念ですが…)
約1300頁の大部な原書をわずか7名で翻訳,渡辺正先生が全体のトーンを揃えるため多くの時間を費やしてくれました。その甲斐あって,事典ハンドブックにあっては珍しいほど最初から最後まで読みやすい文章になっています。本書の特徴が見事に生かされた翻訳です。
最近,元素資源の有限性から「石油危機」ならぬ「元素危機」が言われています。文科省は今年から「元素戦略」プロジェクトを立ち上げ,希少元素(金属)の代替・節約ができるよう,豊富な元素の研究・技術開発を強力に推進しています。本書にとっては追い風と期待しています。(後藤)
目次
1. はじめに
1.1 元素とは何か
1.2 古代人も知っていた元素
1.3 探索・発見・利用
1.4 元素の系統的研究
1.5 本書について
1.6 採鉱に関する定義と事実
1.7 文献情報
1.8 元素の定量的記述
2. 物質の理解に向けた歩み
2.1 原点は「ものづくり」
2.2 古代の物質観
2.3 錬金術の光と影
2.4 パラケルスス:錬金術と医化学の奇才
2.5 16世紀の実用主義の先覚者二人
2.6 17世紀の新風
2.7 フロギストン
2.8 18世紀末の化学革命
2.9 原子説への突破口
2.10 原子の理解へ
2.11 固体の理解
2.12 物質の内部を見る
2.13 21世紀の錬金術:ナノテクノロジー
2.14 生命界の無機化学
3. 元素の起源・分布・発見・名前
3.1 元素の誕生
3.2 地球の姿
3.3 周期表
3.4 元素の発見
3.5 元素の名前
3.6 元素記号
4. 地球化学
4.1 地殻に多いもの・少ないもの
4.2 地殻の成分
4.3 地球化学の歩み
4.4 地球化学の原理と成果
4.5 地球化学と同位体
4.6 放射性を利用する年代測定
5. 金
5.0 金のデータ
5.1 人類史と金
5.2 いまでも金は見つかるか?
5.3 金の鉱石と埋蔵量
5.4 鉱山での金生産
5.5 化学・冶金学的手法を使う金の精錬
5.6 金の性質
5.7 金の用途
5.8 生命と金
6. 銀
6.0 銀のデータ
6.1 人類史と銀
6.2 銀の地質学
6.3 銀の採掘
6.4 銀の製錬:冶金学と化学
6.5 性質と用途
6.6 生命と銀
7. 銅
7.0 銅のデータ
7.1 人類史と銅
7.2 銅の鉱石
7.3 銅の製錬
7.4 銅の生産量
7.5 銅の用途
7.6 生命と銅
8. 鉄
8.0 鉄のデータ
8.1 鉄と鋼
8.2 製錬:高温で進む化学現象
8.3 鉄の世界史
8.4 銑鉄:鍛造はできないが棒材になる鉄
8.5 スウェーデンと英国:協同と競争
8.6 冶金が科学になる
8.7 鉄鉱石
8.8 現代の製鋼
8.9 いろいろな鋼
8.10 鋼の生産量
8.11 生命と鉄
9. 水 素
9.0 水素のデータ
9.1 水素の発見
9.2 水素の分布
9.3 水素の製造
9.4 水素の用途
9.5 水素の同位体:重水素と三重水素
9.6 核融合エネルギー
9.7 生命と水素
10. 吹管と分光器─元素の発見を支えた道具
10.1 吹管を使う分析
10.2 分光分析の基礎
10.3 炎の色で元素を知る
10.4 スペクトル:見える光と見えない光
10.5 分光学の発展
10.6 分光分析のとき原子には何が起きている?
10.7 原子番号とX線スペクトル
10.8 現代の分光分析とX線分析
11. ナトリウムとカリウム
11.0 a ナトリウムのデータ
11.0 b カリウムのデータ
11.1 アルカリ金属
11.2 化学史にみるナトリウムとカリウム
11.3 激動期の化学工学
11.4 現在のナトリウム
11.5 製 造
11.6 ナトリウムの単体・化合物の用途
11.7 現在のカリウム
11.8 用 途
11.9 生命とナトリウム・カリウム
12. リチウム
12.0 リチウムのデータ
12.1 リチウムの発見
12.2 リチウムの分布
12.3 リチウムの製造
12.4 リチウムの用途
12.5 生命とリチウム
13. ルビジウムとセシウム
13.0 a ルビジウムのデータ
13.0 b セシウムのデータ
13.1 ルビジウム・セシウムの発見
13.2 現代のルビジウム
13.3 現代のセシウム
13.4 生命とルビジウム・セシウム
14. マグネシウムとカルシウム
14.0 a マグネシウムのデータ
14.0 b カルシウムのデータ
14.1 アルカリ土類金属のあらまし
14.2 化学史中のマグネシウムとカルシウム
14.3 現代のマグネシウム
14.4 現代のカルシウム
14.5 生命とマグネシウム・カルシウム
15. ベリリウム
15.0 ベリリウムのデータ
15.1 ベリリウムの発見
15.2 ベリリウムの分布
15.3 ベリリウムの製造
15.4 ベリリウムの用途
15.5 生命とベリリウム
16. ストロンチウムとバリウム
16.0 a ストロンチウムのデータ
16.0 b バリウムのデータ
16.1 化学史中のストロンチウムとバリウム
16.2 現代のストロンチウム
16.3 現代のバリウム
16.4 花火の色と閃光
16.5 生命とストロンチウム・バリウム
17. 希土類金属─スカンジウム,イットリウム,ランタンとランタニド元素
17.1 周期表と自然界における希土類金属
17.2 元素発見をめぐる紆余曲折
17.3 希土類元素の長い発見物語
17.4 ランタニド元素の特殊な性質
17.5 希土類金属の分布
17.6 希土類元素の分離
17.7 希土類金属の生産
17.8 希土類金属の用途
17.9 応用例
17.10 価 格
17.11 生命と希土類金属
18. チ タ ン
18.0 チタンのデータ
18.1 発 見
18.2 チタン鉱物
18.3 酸化チタン(チタンホワイト)の生産
18.4 金属チタンと合金
18.5 チタンとチタン化合物の用途
18.6 生命とチタン
19. ジルコニウム
19.0 ジルコニウムのデータ
19.1 発 見
19.2 ジルコニウム鉱物
19.3 ジルコンと酸化ジルコニウムの用途
19.4 金属ジルコニウムと合金
19.5 生命とジルコニウム
20. ハフニウム
20.0 ハフニウムのデータ
20.1 発 見
20.2 鉱 物
20.3 ジルコニウムとの分離
20.4 用 途
20.5 生命とハフニウム
21. バナジウム
21.0 バナジウムのデータ
21.1 バナジウムの発見
21.2 自然界のバナジウム
21.3 生産量
21.4 バナジウムの製造と製品
21.5 バナジウムの用途
21.6 生命とバナジウム
22. ニ オ ブ
22.0 ニオブのデータ
22.1 ニオブの発見
22.2 ニオブとタンタルの鉱物
22.3 ニオブの製造
22.4 ニオブの用途
22.5 生命とニオブ
23. タンタル
23.0 タンタルのデータ
23.1 タンタルの発見
23.2 タンタルとニオブの鉱物
23.3 タンタルの製造
23.4 タンタルの用途
23.5 生命とタンタル
24. ク ロ ム
24.0 クロムのデータ
24.1 クロムの発見
24.2 クロム鉱床
24.3 クロム製品の製造
24.4 ステンレス鋼はなぜさびない?
24.5 クロムめっきとクロメート処理
24.6 生命とクロム
25. モリブデン
25.0 モリブデンのデータ
25.1 モリブデンの発見
25.2 現在のモリブデン鉱床
25.3 金属モリブデンと合金の製造
25.4 モリブデンの用途
25.5 生命とモリブデン
26. タングステン
26.0 タングステンのデータ
26.1 タングステンの発見
26.2 自然界のタングステン
26.3 タングステン製品の化学
26.4 タングステン製品の冶金と粉末冶金
26.5 タングステンの用途とタングステン製品
26.6 生命とタングステン
27. マンガン
27.0 マンガンのデータ
27.1 マンガンの発見
27.2 現在のマンガン鉱床
27.3 マンガン製品の製造
27.4 マンガンの用途とマンガン製品
27.5 生命とマンガン
28. テクネチウム
28.0 テクネチウムのデータ
28.1 テクネチウムの発見
28.2 テクネチウムの性質と用途
29. レニウム
29.0 レニウムのデータ
29.1 レニウムの発見
29.2 現代のレニウム資源
29.3 レニウムの製造技術
29.4 レニウムの用途
29.5 生命とレニウム
30. コバルト
30.0 コバルトのデータ
30.1 コバルトの発見
30.2 コバルトの鉱床
30.3 鉱石や濃縮鉱からコバルト製品へ
30.4 コバルトの用途
30.5 生命とコバルト
31. ニッケル
31.0 ニッケルのデータ
31.1 ニッケルの発見
31.2 化学史と鉱物学史の独立した章
31.3 ニッケルを発見したのは中国人?
31.4 ニッケルの所在
31.5 団塊・隕石・地核のニッケル
31.6 ニッケルの製造
31.7 ニッケルの用途
31.8 生命とニッケル
32. 白金族元素
32.1 白金族金属のあらまし
32.2 自然白金
32.3 白金中に白金族元素を発見
32.4 白金族金属の生産
32.5 白金族金属の製錬
32.6 白金族金属の用途
32.7 白金族金属の価格
32.8 生命と白金族元素
33. 亜 鉛
33.0 亜鉛のデータ
33.1 歴史の中の亜鉛
33.2 亜鉛の採掘
33.3 現代の亜鉛精錬
33.4 亜鉛の用途
33.5 生命と亜鉛
34. カドミウム
34.0 カドミウムのデータ
34.1 発 見
34.2 採鉱と精錬
34.3 カドミウムの用途
34.4 生命とカドミウム
35. 水 銀
35.0 水銀のデータ
35.1 歴史の中の水銀
35.2 現代の水銀生産
35.3 水銀の毒性
35.4 水銀の用途
36. ホ ウ 素
36.0 ホウ素のデータ
36.1 歴史の中のホウ素
36.2 現在のホウ素生産
36.3 ホウ素の一般的用途
36.4 特殊な用途
36.5 生命とホウ素
37. アルミニウム
37.0 アルミニウムのデータ
37.1 歴史の中のアルミニウム
37.2 アルミニウムの原料
37.3 アルミニウム製造
37.4 用途の広い合金
37.5 アルミニウムと合金の表面処理
37.6 アルミニウムと合金の用途
37.7 生命とアルミニウム
38. ガリウム,インジウム,タリウム
38.1 発見の歴史
38.2 産 出
38.3 金属と化合物の製造
38.4 性質と用途
38.5 生命とガリウム・インジウム・タリウム
39. 炭 素
39.0 炭素のデータ
39.1 長い歴史
39.2 宇宙の炭素
39.3 地球上の炭素
39.4 発電用の石炭と金属精錬用のコークス
39.5 カーボンブラックと活性炭
39.6 グラファイト
39.7 ダイヤモンド
39.8 フラーレン
39.9 合成ダイヤモンド
39.10 炭素の循環
39.11 温室効果
39.12 炭素14を使う年代測定
40. ケ イ 素
40.0 ケイ素のデータ
40.1 古代の疑問に答える
40.2 ケイ酸塩:岩石の基本成分
40.3 ケイ素:科学技術に必須の元素
40.4 その他の用途
40.5 生命とケイ素
41. ゲルマニウム
41.0 ゲルマニウムのデータ
41.1 ゲルマニウムの発見
41.2 分布と製法
41.3 ゲルマニウムの性質と用途
41.4 生命とゲルマニウム
42. ス ズ
42.0 スズのデータ
42.1 歴史の中のスズ
42.2 スズ,スタンヌム,カッシテライト:語源
42.3 英国コーンウォールのスズ
42.4 世界のスズ鉱物とスズ鉱床
42.5 金属スズの生産
42.6 スズの用途
42.7 スズ鳴りとスズペスト
42.8 現代のスズめっき
42.9 生命とスズ
43. 鉛
43.0 鉛のデータ
43.1 歴史の中の鉛
43.2 鉛の地質学
43.3 鉛の鉱業生産
43.4 金属鉛の生産
43.5 まだ使う鉛
43.6 生命と鉛
44. 窒 素
44.0 窒素のデータ
44.1 窒素の発見
44.2 窒素の分布
44.3 溶ける窒素化合物を求めて
44.4 窒素と窒素化合物の利用
44.5 窒化物セラミックス
44.6 生命と窒素
45. リ ン
45.0 リンのデータ
45.1 一大センセーション
45.2 リンの妙薬
45.3 元素発見史とリン
45.4 危険なマッチと安全マッチ
45.5 リンの分布と製法
45.6 リン肥料
45.7 生命とリン
46. ヒ素,アンチモン,ビスマス
46.1 錬金術とヒ素・アンチモン
46.2 ヒ 素
46.3 アンチモン
46.4 ビスマス
47. 酸 素
47.0 酸素のデータ
47.1 歴史の中の酸素
47.2 酸素の分布
47.3 酸素の製造と利用
47.4 生命と酸素
48. 硫 黄
48.0 硫黄のデータ
48.1 歴史の中の硫黄
48.2 硫黄の分布
48.3 硫黄と硫黄の生産
48.4 硫黄と硫黄化合物の用途
48.5 生命と硫黄
48.6 硫黄循環の乱れ
49. セレン,テルル
49.1 発 見
49.2 分 布
49.3 生 産
49.4 用 途
49.5 生命とセレン・テルル
50. ハロゲン元素
50.1 ハロゲン元素の発見史
50.2 ハロゲン元素の分布と製造
50.3 ハロゲン元素の用途
50.4 生命とハロゲン元素
51. 貴ガス元素
51.1 アルゴンの発見
51.2 ほかの貴ガスの発見
51.3 貴ガスの製造
51.4 貴ガスの用途
52. 放射性元素
52.1 放射能の発見前に知られていた放射性元素
52.2 放射能
52.3 ベクレル:放射能の発見者
52.4 マリー・キュリー
52.5 マリーの博士論文研究
52.6 マリーの晩年と死
52.7 ラジウムの重要性と用途
52.8 アクチニウムとラドン
52.9 埋まっていく周期表
52.10 産業に使うトリウム
52.11 産業に使うウラン
52.12 核分裂
52.13 原子炉
52.14 オクロ:天然の原子炉
52.15 超ウラン元素
52.16 アクチニドより先:超アクチニド元素
索引
執筆者紹介
【訳者】西原 寛,立間 徹,下井 守,野津憲治,宮村一夫,髙野穆一郎