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環境考古学ハンドブック
安田 喜憲(編)
内容紹介
遺物や遺跡に焦点を合わせた従来型の考古学と訣別し,発掘により明らかになった成果を基に復元された当時の環境に則して,新たに考古学を再構築しようとする試みの集大成。人間の活動を孤立したものとは考えず,文化・文明に至るまで気候変化を中心とする環境変動と密接に関連していると考える環境考古学によって,過去のみならず,未来にわたる人類文明の帰趨をも占えるであろう。各論で個別のテーマと環境考古学のかかわりを,特論で世界各地の文明について論ずる。
編集部から
目次
第I編 環境考古学総論
1. 環境考古学総論
1.1 環境考古学の元祖
1.2 文明の環境史観
1.3 岩石圏の環境考古学
1.4 水圏の環境考古学
1.5 大気圏の環境考古学
1.6 生物圏の環境考古学
1.7 人間圏の環境考古学
第II編 環境考古学各論
2. 炭素14年代キャリプレーション
2.1 「放射能時計」としての炭素14年代
2.2 炭素14年代と実年代の違い
2.3 完新世の炭素14年代スケールの特徴
2.4 炭素14年代キャリプレーションの方法
2.5 炭素14年代キャリブレーションプログラムを使うための基本
2.6 CALIBプログラムを使った炭素14年代キャリブレーション
2.7 較正年代の表記法
2.8 最終氷期における炭素14年代キャリプレーションカーブの拡大
3. 放射線効果年代測定
3.1 放射線効果年代測定の原理
3.2 各分野におけるESR法の適応例
3.3 放射線被曝線量の分布画像測定:ESR顕微鏡
4. 古地磁気編年と環境磁気学
4.1 変動する地球磁場
4.2 考古地磁気年代推定法
4.3 堆積物からの情報
4.4 環境の指標として
5. 宇宙からの考古学
5.1 宇宙からの遺跡探査
5.2 遺跡の分布
5.3 中央アジアと砂漠化
5.4 ホレズム地域の遺跡
5.5 北シリア・パルミラの遺跡
5.6 エジプトとナイル川
5.7 様々な試み
6. 堆積環境と考古学
6.1 堆積環境の分類と堆積物
6.2 堆積物による堆積環境調査法アラカルト
6.3 堆積環境と考古遺跡の例
7. テフラと考古学
7.1 テフロクロノロジーの原理と方法
7.2 テフラの分析同定方法
7.3 テフラを利用した最近の考古学的成果と今後の展開
8. 地震考古学
8.1 遺跡の地震跡
8.2 地震の履歴訓査
9. 堆積物から復元された気候変動と環境考古学
9.1 湖沼・レス古土壌堆積物の調査・分析方法
9.2 鳥取県東郷池年縞堆積物による過去35000年間の突然かつ急激な気候・
海水準変動
9.3 レス古土壌堆積物によって明らかにされた過去75000年間の
アジアモンスーン変動
9.4 堆積物から読みとれた気候・海水準変動と縄文文化の関係
9.5 環境変動のトリガーとしての大気循環運動
10. 海面変化と考古学
10.1 相対的海面変化
10.2 海面変化に支配される海岸線変化
11. 土壌と考古学
11.1 土壌断面の観察
11.2 土壌型
11.3 黒ボク土
11.4 ローム層
11.5 最終氷期の風成塵の意義
11.6 風成塵石英のESR分析法
12. 微地形の環境考古学
12.1 地形環境分析
12.2 土地条件図,地形分類図利用の限界と埋没微地形
12.3 微地形変化モデル
12.4 旧地表面の認定と極微地形環境分析
13. 沿岸環境考古学
13.1 富栄養化と赤潮
13.2 プランクトンの生理・生態学的情報
13.3 堆積物の地質年代学的情報
13.4 西九州・大村湾の表層堆積物に残された最近の水質環境変遷
13.5 堆積物の年代と渦鞭毛藻シスト群集
13.6 堆積物と渦鞭毛藻シスト群集が語る水質環境の変遷
14. 珪藻分析による古環境の復元
14.1 環境のロングタームモニタリングと珪藻分析
14.2 珪藻分析の意義
14.3 珪藻分析の方法
14.4 珪藻分析による古環境復元の実例
15. 花粉分析法と炭化片分析法
15.1 花粉分析法の原理
15.2 堆積物の採取法
15.3 分析方法
15.4 炭化片分析法
15.5 花粉ダイヤグラムの作成
15.6 標本の保管
15.7 花粉データベース
16. バイオーム考古学
16.1 バイオーム考古学とは
16.2 原埋
16.3 方法
16.4 結果と考察
17. 花粉分析による定量的環境復元と考古学
17.1 古気候学の視点
17.2 花粉分析
17.3 定量的復元の意義
17.4 定量的復元のいくつかの方法
17.5 ベストモダンアナログ法の登場
17.6 「ベストモダンアナログ」を見つける
17.7 計算のバリエーション
17.8 復元の精度を検証する
付録:PPPbaseの使用法
18. 種実の考古学
18.1 種実から何がわかるのか
18.2 試料の採取にあたっての注意点
18.3 分析方法
18.4 種実の同定の仕方
18.5 分析結果の解釈
18.6 考古学遺跡における種実類分析研究の実例
19. 木材考古学
19.1 迫跡出土木材の性質
19.2 樹種の見分け方
19.3 遺跡出土木材の樹種と用途
20. 年輪考古学
20.1 年輪考古学とは
20.2 年輪標準曲線
20.3 予備知識
20.4 年輪年代法の実際
20.5 試料の取り扱い
21. 古代稲・炭化米の考古学
21.1 稲作には7000年以上の歴史がある
21.2 古代稲の顔・表情
21.3 考古試料の採取・計測の基本
21.4 研究報告の事例
21.5 計測調査の方法・意義
21.6 調査結果のまとめ方・読み方
21.7 結果の解釈と展開
22. プラント・オパールと環境考古学
22.1 遺跡の立地と環境
22.2 地形分析と微化石分析
22.3 プラント・オパール
22.4 プラント・オパール分析とその応用
22.5 分析の成果
23. 灰像と考古学
23.1 原理と方法
23.2 考古学との連携における問題点と注意すべき点
23.3 日本における具体的な研究事例
23.4 分析試料を採取する方法や留悲すべき点
23.5 分析データの解釈において注意すべき点
24. 植物プランクトンおよび動物プランクトン分析の湖沼考古学への適用
24.1 プランクトンの微化石と文明の形成
24.2 古湖沼学に用いられる生物の微化石
24.3 分析方法と注意点
24.4 分析に適応する年代の範囲
24.5 緑藻植物と藍藻植物の化石―調査研究例
24.6 水位の変化とクンショウモ属
25. DNA考古学
25.1 DNAとは
25.2 DNAの寿命
25.3 DNA考古学の原理
25.4 DNA考ハ学の実際
25.5 DNA考古学的方法の問題点
26. 貝と考古学
26.1 日本列島を洗う黒潮と親潮
26.2 海成沖積層の温暖種
26.3 南関東における温暖種の出現と消滅
26.4 中部日本以南における温暖種
26.5 東北日本における温暖種
26.6 北海道における温暖種
26.7 温暖種の消長からみた約8000年前以降の海況変化
27. 魚類の考古学
27.1 魚類遺存体の研究方法
27.2 縄文時代の魚類遺存体研究の動向と今後の課題
28. 昆虫考古学
28.1 試料採取と分析の方法
28.2 考古学への応用
29. 鳥類の考古学
29.1 鳥と環境史研究
29.2 国内での研究の現状
29.3 鳥骨の同定法
29.4 鳥類相の時空的理解
30. 哺乳動物の考古学
30.1 動物遺物の採集時の注意
30.2 試料の分類と同定上の問題
30.3 骨の鑑別と同定
30.4 変異について
30.5 発掘物整理の一例
30.6 家畜の問題
31. 家畜化の考古学
31.1 家畜化(ドメスティケーション)の定義をめぐる問題
31.2 家畜化の動物考古学的証拠
31.3 南東アナトリアにおける偶蹄類の家畜化
32. 炭素・窒素同位体による古食性復元
32.1 同位体食性分析の原理
32.2 炭素・窒素同位体比からみた縄文人の適応
32.3 古食性復元研究の今後の展開
33. 寄生虫卵分析
33.1 原理
33.2 寄生虫卵分析からわかること
33.3 分析法
33.4 寄生虫卵分析の実際
33.5 問題点
34. 古病理学と考古学
34.1 古病理学的情報
34.2 縄文時代人の健康と病気の実態
35. ウイルスと考古学
35.1 動く遺伝子レトロウイルスの軌跡
35.2 アメリカ先住民のHTLV-I/II
35.3 遺伝子からみた新大陸北住民族の特徴
35.4 新大陸モンゴロイドの移動史
36. 自然人類学
36.1 古人骨の特殊性
36.2 人骨の調査に入る前に
36.3 調査・研究の対象としての人骨
36.4 人骨の残っているところ
36.5 古人骨の発掘調査
36.6 性別・年齢・推定身長値
36.7 人骨整理から報告書作成まで
36.8 人骨の保管と維持管理
36.9 形質人類学は考古学にどのような情報を提供できるか
36.10 火葬骨は役に立つのか
37. 人口と環境考古学
37.1 過去の人口を探る
37.2 古人口学
37.3 歴史人口学
37.4 環境変動と人口
38. 旧石器の鑑別方法
38.1 石器表面の光学顕微鏡観察
38.2 石器表面の分光反射率と蛍光X線分析による元素組成
38.3 旧石器捏造問題に絡んだ遺跡出土の石器の分析結果について
39. 産地同定の環境考古学
39.1 黒曜石の産地推定
39.2 土器の産地推定
39.3 青銅器の産地推定
40. コンピュータ考古学
40.1 情報化時代の考古学研究
40.2 コンピュータで測る・描く
40.3 数字で解く考古学
40.4 テータベース
40.5 高度情報化時代へ向かって
41. 縄文漆の環境考古学
41.1 縄文漆の研究
41.2 鳥浜貝塚の漆
41.3 中国漆文化の始まり
41.4 漆は渡来したのか
41.5 漆製品の取り上げ
42. 埋蔵文化財の保存と修復
42.1 木製遺物
42.2 出土植物性遺物および脆弱遺物
42.3 食物残滓
43. 発掘遺構の保存と修復
43.1 造形保存の展開と意味
43.2 留消遺物について
43.3 遺構の保存と修復
43.4 留摘遺物の採取要領
43.5 保存再生の要領
44. 建築と環境考古学
44.1 調査記録の読み方
44.2 社会環境
44.3 文化的環境
44.4 自然環境
45. ハイテク考古学
45.1 考古学測量・計測方法の変化
45.2 リアルタイム・デジタル測量・計測
45.3 図化・マッティング
45.4 遺跡・遺構・遺物計測の未来
第III編 環境考古学特論
46. 長江文明の環境考古学
46.1 稲作農業の起源
46.2 定住革命から農耕革命へ
46.3 農耕革命から都市革命へ
46.4 城頭山遺跡は森に囲まれた乾燥した台地に立地した
46.5 世界最古の水田の発見
46.6 中国最古の稲作祭壇遺構の発見
46.7 稲作農耕と太陽信仰
46.8 世界最古の焼成煉瓦の発見
46.9 中国最古の祭場神殿(神殿)と祭政殿(王宮)の発見
46.10 長江文明の担い手
46.11 古代都市の自然破壊と汚染の実態
46.12 4200年前の気候変動と長江文明の衰亡
47. インダス文明の環境考古学
47.1 インダス文明
47.2 インダス文明の終焉
47.3 インダス文明滅亡の新しい観方
47.4 インダス文明の終焉後
47.5 インダス文明減亡の意味するもの
47.6 インダス文明滅亡と環境
48. エジプト文明の環境考古学
48.1 ナイル川
48.2 古代エジプト王朝
48.3 エジプト文明の特徴
48.4 アスワン・ハイ・ダム
49. メソポタミア文明の環境考古学
49.1 自然環境
49.2 テル・レイラン遺跡
49.3 砂漠化と都市崩壊
49.4 突然の気候変化とその影響
50. レヴァントの歴史と環境考古学
50.1 レヴァントの地形と植生
50.2 環境の変遷と人類史の変節点
50.3 遺跡と自然環境
51. ギリシアと環境破壊
51.1 ギリシアにおける環境破填
51.2 伝統的学説とその批判
51.3 事例検証:キラーダ湾周辺地域
52. 気候変動とメソアメリカ文明の滅亡
52.1 アメリカ大陸への人類の移動
52.2 大動物の絶減と食用植物の栽培化
52.3 オルメカ文化の起源とその神々
52.4 マヤ文化と蛇信仰
52.5 マヤ古典期文明の崩壊
53. 先スペイン期におけるエル・ニーニョとアンデス文明の展開
53.1 エル・ニーニョ
53.2 エル・ニーニョとアンデス文明の展開
54. ポリネシアの環境考古学
54.1 イースター島における生態系の崩壊
54.2 結論
55. 草原遊牧文明の環境考古学
55.1 遊牧の起源に関する諸説
55.2 気候変動に関する現在の研究状況
55.3 クジミナによる時期区分
55.4 その後の草原地帯の歴史
56. 岩宿時代の環境考古学
56.1 旧石器時代における日本列島の気候と植生の変化
56.2 2万年前の「富沢人」のみた風景
57. 縄文のクリとトチノキの栽培と気候
57.1 縄文文化の発展と落葉広葉樹林の拡大
57.2 食糧としてのクリとトチの利用の可能性
57.3 花粉分析からみたトチの実とクリの利用
57.4 クリとトチノキ栽培の時代と環境
58. 弥生時代の環境考古学
58.1 地形環境にみる遺跡立地
58.2 墓制の地域差にみる森林資源とのかかわり
58.3 木製品などの出土状況からみた植生復元
58.4 稲作農耕遺跡の波及にみる弥生環境の変化
58.5 「倭国大乱」の環境考古学的考察
59. 日本人口史と環境考古学
59.1 日本列島の人口
59.2 人口・文明・環境
59.3 地域人口の変化
索 引
執筆者紹介
【編集者】安田喜憲
【執筆者(執筆順)】北川浩之,池谷元伺,谷 篤史,林田/明,坂田俊文,竹村恵二,早田 勉,寒川 旭,福澤仁之,森脇 広,成瀬敏郎,高橋 学,松岡数充,鹿島 薫,沢井祐紀,高原 光,谷田恭子,五反田克也,中川 毅,那須浩郎,伊東隆夫,米延仁志,和佐野喜久生,外山秀一,松谷暁子,Miroslaw Makohonienko,佐藤洋一郎,松島義章,上野輝彌,山崎京美,森 勇一,松岡廣繁,長谷川善和,本郷一美,米田 穣,金原正明,鈴木隆雄,田島和雄,松下孝辛,鬼頭 宏,小野 昭,平尾良光,及川昭文,森川昌和,北野信彦,森山哲和,宮本長二郎,宮塚義人,近藤英夫,吉村作治,松本 健,常木 晃,中井義明,高山智博,坂井正人,Barry V.Rolett,林 俊雄,守田益宗,北川淳子,山岸良二