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内容紹介
ナノ寸法の超微小な光=近接場光の実用化は,回折限界を超えた重大なブレークスルーであり,通信・デバイス・メモリ・微細加工などへの応用が急発展している。本書はこの近接場光を中心に,ナノ領域の光工学の理論と応用を網羅的に解説。〔内容〕理論(近接場,電磁気,電子工学,原子間力他)/要素の原理と方法(プローブ,発光,分光,計測他)/プローブ作製技術/生体/固体/有機材料/新材料と極限/微細加工技術/光メモリ/操作技術/ナノ光デバイス/数値計算ソフト/他
編集部から
目次
I.基礎編
1. 概要
1.1 光工学における微小化の必要性
1.2 回折限界を打破する方法
1.3 ナノ光工学の進展
2. 理論的基礎
2.1 近接場光の理論の分類
局所分極と自己無撞着場
2.2 電磁場理論
マックスウェル方程式/等方性媒質に対する波動方程式/境界条件/ベクトル波動関数/円筒波動関数/平面波電磁場の円筒波展開/無限長完全導体円柱による電磁波の散乱・回折
2.3 微小領域の電磁気学
微小領域の電磁気学と光学の特徴/光と物質の結合モード/散乱問題とアンギュラスペクトル/多重極展開と近接場光/散乱問題と自己無撞着場
2.4 量子論的近接場光学
基本的な考え方と質量をもつ仮想光子モデル/射影演算子法有効演算子と有効相互作用/光と物質の相互作用:多重極ハミルトニアンとミニマル結合ハミルトニアン/素励起モードと電子分極/近接場光相互作用:湯川ポテンシャル/応用例:近接場光プローブによる単一原子操作/展望
2.5 電子・物質との相互作用
微小領域の電磁相互作用/物質の光学応答と平均場/光子と電子の近接場光相互作用/近接場光相互作用における準保存則と力学作用/近接場光の量子電気力学
2.6 表面プラズモンの基礎
表面プラズモンとは/伝搬型の表面プラズモン/局在型の表面プラズモン/金属微粒子-金属表面系のギャップモード
2.7 近接場光の力学的作用
2.8 原子への力学的作用
光ブロッホ方程式/原子に作用する力/光シフト/近接場光による原子の冷却
2.9 微小領域の電子系の振舞い
ナノ光工学における電子系と電磁場のかかわり/走査型トンネル顕微鏡における発光現象/空隙領域での電子波干渉/クーロンブロッケードの物理
2.10 原子間力の基礎
自然界における力/分極の効果/ファンデルワールス力/レナード-ジョーンズポテンシャル/固体表面の構造/マクロな相互作用:物体の大きさの影響/共有結合力1:ダングリングボンド間の原子間カ/共有結合力2:ダングリングボンドと空軌道問の原子間力
3. 要素の原理と方法
3.1 プローブ
プローアの原理/各種プローブの原理/プローブの位置制御の原理と効果/原子間力顕微鏡におけるプローブと位置制御/走査型トンネル顕微鏡におけるプローブと位置制御
3.2 環境技術
防振/真空/低温
3.3 光計測技術
複屈折,吸収,透過,反射/発光分光/多光子過程の利用/ラマン分光/赤外分光
3.4 電子,力との融合計測
走査型トンネル顕微鏡発光計測/原子間カによる近接場光の計測
4. プローブ作製技術
4.1 エッチング技術
溶融延伸と真空蒸着/メニスカスエッチング/光ファイバの選択エッチングとファイバガラスの溶解速度
4.2 高効率・高分解能プローブ作製技術
ドライプロセス/ウェットプロセス
4.3 シリコン技術・マイクロマシン技術
小型・集積化のための要素技術/マイクロマシンニングによるプローブ作製方法
4.4 プローブ作製技術
集積型プローブ:フォトカンチレバー/フォトカンチレバーによる近接場光学/原子間力同時観測装置
II.計測編
5. 生体
5.1 生物試料計測の可能性
生物試料観測における近接場光学顕微鏡の意義/観測例/生物試料観測の課題
5.2 細胞および染色体の表層構造・機能の画像計測
近接場光学/原子間力顕微鏡によるGFP遺伝子組替え大腸菌細胞の解析/染色体解析への応用/肥満細胞の開口放出の解析/神経細胞機能の解析
5.3 近接場光による細胞膜のダイナミクスと接着形成の研究
生命科学における近接場光を用いることの重要性/近凍場光による細胞内分子の観察/細胞の膜のダイナミックな位置の変化の研究/細胞の接着構造の形成の研究への応用/走査型の近接場光学顕微鏡
5.4 細胞骨格・細胞内での蛍光計測
走査型の近接場光学顕微鏡による生細胞アクチン骨格の蛍光観察/TIRFMによる生細胞内での1分子蛍光観察
6. 固体
6.1 半導体デバイス
量子デバイス/バルク
6.2 光導波路
測定系/測定例
6.3 LSIチップ上配線
実験構成/空間分解能の向上/0BICの非発生と高空間分解能OBIRCHの実現/異常箇所の物理的解析結果と考察
6.4 フォトニック結晶
フォトニックバンド/近接場光とフォトニック結晶/微小球2次元配列結晶/面内伝搬光の分散関係の決定/微粒子間隙の変化が与える影響/近接場光学顕微鏡による透過光励起像の観察/近接場光学顕微鏡による蛍光励起像の観察
7. 有機材料
7.1 単一分子・エネルギー移動
単一分子検出に必要な条件/単一分子観察の具体的方法/近接場光学顕微鏡による単一分子計測技術/近接場光学顕微鏡による単一分子観察例/今後の展望
7.2 薄膜・EL
有機EL薄膜/LB膜
7.3 フォトクロミック材料
ジアリールエテン/ペリナフトチオインジゴ
7.4 高分子結晶
高分子固体の凝集構造/単結晶/球晶/繊維構造
7.5 光化学への応用
光励起と光プロセスの観測/近接場光学顕微鏡による局所光プロセス/局所場分子情報
8. 新材料と極限
8.1 磁性
微小領域磁気光学,磁場検出法の最近の進展/光-磁気-伝導複合物性開拓の現状
8.2 原子分光学
原子と近接場光相互作用の特徴/近接場原子分光法
III.加工・機能・操作編
9. 微細加工技術
9.1 光化学気相堆積
9.2 リソグラフィー
露光方式/実用化への課題
9.3 アブレーション
アブレーション機構/アブレーション機構の解明例/アブレーション加工例
9.4 分子ファブリケーション
分子光物理・光化学過程/光熱的ファブリケーション/光化学的ファブリケーション
10. 光メモリー
10.1 状況
近接場光による光メモリーの必要性/各種要素技術の課題
1O.2 受動デバイスによる取組み
10.3 能動デバイスによる取組み
能動デバイスとして表面発光半導体レーザに取り組む理由/VCSELアレイの実際/VCSEL2次元アレイを用いた高効率プローブ/コンタクト光ヘッドとエバネッセント波/表面プラズモンポラリトン/超高密度/超高速データ転送速度の光ディスクシステム/PPP試作プロセスと表面プラズモン発生用金属コート/開口穿孔技術
10.4 非線形現象による取組み
スーパレンズの原理と特徴/スーパレンズの動作機構/課題解決に
向けた取組み/今後の展望
11. 操作技術
11.1 原子操作
原子の反射/原子の誘導/ファイバプローブを用いた原子の制御/原子ファネル
11.2 ミー粒子操作
放射圧の発生/レーザトラッピングによる粒子操作/粒子が小さい場合のトラッピング/トラップしたミー粒子による計測
11.3 タンパク質分子
光ピンセット法の基礎/光ピンセット装置/ナノ計測技術/細胞膜研究への応用
12. ナノ光デバイス
12.1 概要・原理
利用すべき現象/利用すべき材料/利用すべきデバイス作製法/必要とされる性能など
12.2 ナノコヒーレントデバイス
電磁場の存在する空間の寸法/電子の分散関係とフォトンの分散関係/分子の周辺での電磁場の検出/クーロンブロッケード/コヒーレント電子による干渉/近接した分子による位相効果
12.3 ポラリトン導波路デバイス
励起子ポラリトンの性質/導波路を伝搬する励起子ポラリトン/ポラリトン変調器・スイッチ/その他の材料の励起子ポラリトンと素子応用
12.4 金属導波路
概要/光デバイスの微細化の限界/低次元光波/表面プラズモンポラリトン/2次元光波伝送路の性質/1次元光波伝送路の性質/応用
12.5 光アシストデバイス
光アシストトンネル/テラヘルツ光アシストトンネルの観測/光アシストトンネルを利用したテラヘルツ3端子素子
13. 付録:数値計算ソフトの概要
13.1 近接場における電磁場計算
13.2 相互作用を考慮した電磁場計算法の比較
13.3 さまざまなシミュレーション技術
有限差分時間領域法/及極子法/境界要素法
13.4 多重多極子法
14. 索 引
執筆者紹介
【編集者】大津元一,堀 裕和,河田 聡
【執筆者(執筆順)】大津元一,辰巳仁史,小林 潔,飯野亮太,高橋信行,太田-飯野里子,堀 裕和,楠見明弘,林 真至,戸田泰則,菅原康弘,福田浩章,伊藤治彦,二川 清,塚田 捷,伊藤 正,岩渕修一,藤平正道,森田清三,郭 廣柱,斎木敏治,入江正浩,八井 崇,高原 淳,興ろ元伸,伊藤紳三郎,河田 聡,青木裕之,井上康志,腰原伸也,芦野 慎,宗片比呂夫,栗原一嘉,中島邦雄,上柳喜一,増原 宏,納谷昌之,吉川裕之,ウマ・マヘスワリ,後藤顕也,橋詰富博,阿刀田伸史,松田一成,杉浦忠男,梅田倫弘,藤原敬宏,中村 収,ケン・リッチー,成田貴人,山下英俊,村下 達,根城 均,物部秀二,勝山俊夫,羽根一博,高原淳一,小野崇人,小林哲郎,福澤健二,浅田雅洋,民谷栄一,古川祐光