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内容紹介
世界的な人口増加を背景とする食料の増産と,それを支える肥料需要の増大によって深刻化する水質汚染や大気汚染などの環境問題。これら今日的な課題を踏まえ,持続可能な農業生産体制の構築のための新たな指針として,肥料の基礎から施肥の実務までを解説。〔内容〕食料生産と施肥/施肥需要の歴史的推移と将来展望/肥料の定義と分類/肥料の種類と性質(化学肥料/有機性肥料)/土地改良資材/施肥法/施肥と作物の品質/施肥と環境
編集部から
日本では,少子化問題や人口減少の危機などがずいぶん前から叫ばれているが,世界的にはなお,とどまるところを知らない人口増加が続いている。そのため,地球規模で見た場合,もっと多くの食糧が必要であり,それには農業生産性の向上のための施肥の強化が不可欠でもある。
その半面で,肥料は環境問題そのものである。
先進諸国での過剰な施肥が,環境,とくに土壌,水,大気に影響を与え,人の健康を損なっている事例は増加の一途をたどっており,また,発展途上国では不適切な施肥や土壌管理によって,かえって土壌の劣化や砂漠化を進めているケースも少なくない。
本書は,化学肥料から有機肥料まで,肥料そのものを解説し,さらに作物別の施肥の方法についても詳しく述べた実用性の高い事典である。肥料とはコヤシのことだろう,と単純に考えていた一般人にとっては,作物の味や品質をも操作する肥料と施肥の,農業における多面的な力を教えてくれる。一方で,「環境劣化をもたらさない肥料と施肥法の開発」や「施肥と環境」など環境問題そのものを扱った章はもとより,実務的な記述の中にも,「環境保全型生産システムとしての適合」「どうやって肥料を少なく使うか」という視点が垣間見られ,我々の依って立つ食糧生産の基盤と,環境保全の両立─「持続可能な農業生産体制の構築」の困難さがにじむ一冊でもある。 (瀧原)
目次
1. 食糧生産と施肥
1.1 施肥に対する考え方の歴史的推移
1.2 化学肥科の歴史
1.3 食糧生産における施肥の役割
1.4 環境劣化をもたらさない肥料と施肥法の開発の必要性
2. 肥科需要の歴史的推移と将来展望
2.1 世界的にみた人口増加に伴う食糧生産の増加と肥料消費の推移
2.2 各大陸の主要国における人口増加に伴う施肥量と食糧生産の推移
2.3 わが国における食糧生産と肥科需要の推移
2.4 将来展望
3. 肥料の定義と分類
3.1 植物の必須要素とその役割
3.2 肥科取締法と肥科の定義
3.3 普通肥科と特殊肥料
3.4 肥科の成分
3.5 肥科の登録と検査
3.6 肥科の包装容器
3.7 肥料分析法と鑑定法
3.8 肥料の分類
4. 肥料の分類と性質
4.1 化学肥科
4.2 有機性肥料
5. 土壌改良資材
5.1 土壊改良資材の定義
5.2 地力増進法で指走する土壌改良資材
5.3 地力増進法で指定されていない土壌改良資材
6. 施肥法
6.1 施肥法の基礎
6.2 診断技術と施肥法
6.3 作物と施肥
6.4 日本の伝統的な施肥用語
7. 施肥と作物の品質
7.1 コメ
7.2 畑作物
7.3 野菜類
7.4 飼料作物
7.5 果樹類
7.6 チャ(茶)
7.7 花き類
8. 施肥と環境
8.1 地域環境の汚染
8.2 地球環境の汚染
8.3 不良土壌における緑化と施肥
索 引
執筆者紹介
【編集者】
尾和尚人,木村眞人,越野正義,三枝正彦,但野利秋,長谷川功,吉羽雅昭
【執筆者(執筆順)】
三枝正彦,但野利秋,越野正義,長谷川功,新町文絵,野口章,大坪政廣,直川拓司,秋山尭,羽生友治,小林新,関本均,加藤直人,吉羽雅昭,後藤茂子,樋口太重,藤原俊六郎,吉野昭夫,杉原進,加藤哲郎,尾和尚人,安西徹郎,建部雅子,鳥山和伸,関矢信一郎,西宗昭,高橋正輝,上原洋一,加藤俊博,中林和重,畠中哲哉,梅宮善章,高辻豊二,駒村研三,野中邦彦,稲津脩,中津智史,加藤淳,谷口健雄,上村幸廣,井村悦夫,久場峯子,目黒孝司,原田久富美,齊藤寛,上沢正志,八木一行,岡崎正規