BOOK SEARCH
内容紹介
「機能性食品」に関する科学的知識を体系的に解説。様々な食品成分(アミノ酸,アスコルビン酸,ポリフェノール等)の機能や,食品のもつ効果の評価法等,最新の知識まで詳細に解説。〔内容〕Ⅰ.機能性食品(機能性食品の概念/機能性食品をつくる/他),Ⅱ.機能性食品成分の科学(タンパク質/糖質/イソフラボン/ユビキノン/イソプレノイド/カロテノイド/他),Ⅲ.食品機能評価法(疫学/バイオマーカー/他),Ⅳ.機能性食品とニュートリゲノミクス(実施例/味覚ゲノミクス/他)。
編集部から
健康に対する意識の高まりを反映して,様々な「健康に良い」食品が市場に送り出されています。そして,そのパッケージには「ビフィズス菌配合」「ポリフェノール含有」「キシリトール配合」など,体に良い成分が含まれることを強調するコピーが躍っています。
本書のタイトルにもなっている「機能性食品」とは,健康増進を目的とし,そのような体に良いと言われる成分を加えて作られた加工食品のことです。
また,これらの中で厚生労働省に認可されたものを「特定保健用食品」(いわゆるトクホ)と言い,数千億円という巨大市場となっています。
従来は,糖質,タンパク質,脂質,ミネラル,ビタミンが食品の5大栄養素として注目されてきました。しかし,食品に含まれるその他の成分が,整腸作用,血圧降下作用,抗酸化作用などをもつことが判ってくるにつれ,その良い働きを食に生かすことが意識されるようになってきました。
編者の荒井先生は「機能性食品」の概念を世界に先駆けて提唱されたこの分野の第一人者です。
本書は,そのような「新しい」食品成分の科学的知見の集大成というべき本です。まず,各種成分の構造や機能などの解説から始め,さらにその成分のもつ身体への効果を調べる方法についても解説を加えています。
専門的な内容ですが,現代の食生活を真剣に考えるのに欠かすことのできない一冊です。(平井)
目次
第Ⅰ編 機能性食品
1 機能性食品への道
1.1 医食同源
1.2 食の研究は栄養学から
1.3 嗜好の研究が浮上
1.4 食品研究の転機
2 機能性食品の概念と位置づけ
2.1 新しい考え方
2.2 機能性食品の位置づけと研究の方向性
3 機能性食品をつくる
3.1 機能性食品設計の考え方
3.2 アレルギー低減食品のケース
3.3 行政のはたらき
4 機能性食品の国際化
4.1 欧米の動き
4.2 バイオマーカー開発競争
4.3 日本の対応
5 ポストゲノム時代の機能性食品科学
5.1 ヒトゲノム計画の完了
5.2 ニュートリゲノミクスの誕生
5.3 ニュートリゲノミクスの位置づけ
5.4 DNAマイクロアレイ解析の概要
6 個人差を考慮した機能性食品への道
第Ⅱ編 機能性食品成分の科学
1 タンパク質・ペプチド
1.1 植物性タンパク質
1.2 動物性タンパク質
1.3 タンパク質分解物
1.4 生理活性ペプチド
2 糖 質
2.1 単 糖
2.2 機能性オリゴ糖
2.3 多糖類
3 プロバイオティクス
3.1 アレルギー軽減効果
3.2 感染防御増強作用
3.3 炎症性腸疾患(IBD)への効果
3.4 抗がん効果,NK細胞への効果
3.5 腸管免疫系に対する作用
3.6 整腸作用
3.7 過敏性腸症候群(IBS)に対する効果
3.8 抗ストレス効果
3.9 血圧降下作用
4 脂 質
4.1 長・中鎖脂肪酸
4.2 構造脂質[
4.3 リン脂質
4.4 糖脂質
5 イソプレノイド
5.1 テルペン
5.2 ユビキノン
5.3 メナキノン
5.4 ステロール
5.5 植物性エストロゲン
6 カロテノイド
6.1 はじめに
6.2 カロテノイドの構造と性質
6.3 カロテノイドの吸収・代謝
6.4 カロテノイドの抗酸化活性
6.5 そのほかの生物活性
6.6 疫学・臨床試験
7 トコフェロール・トコトリエノール
7.1 ビタミンEの種類
7.2 ビタミンEの化学的性質と生物活性
7.3 ビタミンEの分布
7.4 ビタミンEの生理機能
7.5 ビタミンEの生体内抗酸化作用
7.6 抗酸化以外のビタミンEの作用
8 ゴマリグナン
8.1 ゴマとゴマリグナンの化学
8.2 セサミンの機能性
8.3 セサモリンの機能性
8.4 セサミノールの機能性
8.5 セサミノール配糖体含有素材の有効利用
9 クルクミン
9.1 クルクミンの機能性
9.2 クルクミンの分子機構
9.3 クルクミンの吸収と代謝
9.4 テトラヒドロクルクミン(THC)の機能
10 有 機 酸
10.1 アミノ酸
10.2 短鎖脂肪酸
10.3 アスコルビン酸
10.4 代謝酸
10.5 フェノール酸
11 ポリフェノール
11.1 ポリフェノールとは
11.2 フェニルプロパノイド
11.3 フラボン・フラボノール
11.4 イソフラボン
11.5 フラバノン
11.6 カテキン
11.7 アントシアニン
11.8 カルコン
11.9 アントラキノン
12 フラビン
12.1 フラビン類の機能
12.2 欠乏症
13 薬理活性成分
13.1 亜熱帯産ショウガ科植物の活性成分
13.2 そのほか注目される薬理活性成分
14 含硫化合物
14.1 はじめに
14.2 ネギ属野菜に含まれる含硫化合物
14.3 アブラナ科野菜に含まれる含硫化合物
14.4 そのほかの重要な含硫化合物例:α―リポ酸
15 アルカロイド
15.1 メチルキサンチン類
15.2 辛味性アミド類
15.3 アブラナ科植物のインドール系アルカロイド
15.4 ソラナムアルカロイド
16 機能性揮発性成分
16.1 揮発性成分
16.2 食用植物由来の揮発性香気成分
16.3 揮発性香気成分の機能性
17 非グリセミック甘味料
17.1 アスパルテーム
17.2 糖アルコール
17.3 各 論
17.4 ソーマチン
17.5 モネリン
17.6 ネオクリン
第Ⅲ編 食品機能評価法
1 疫 学
1.1 疫 学
1.2 疫学のための統計学概論
1.3 栄養疫学
2 機能性食品因子データベース
2.1 がん予防と非栄養素食品因子フィトケミカル
2.2 FFFデータベースの設計
2.3 FFFデータベースのデータ収集
2.4 おもな機能性食品因子の食品別含量
2.5 おもな機能性食品因子の機能性
2.6 ウェブで公開したFFFデータベース
2.7 今後の方向
3 病態モデル動物
3.1 糖尿病モデル
3.2 高脂血症モデル
3.3 高血圧モデル
3.4 骨粗鬆症モデル
3.5 生活習慣病関連遺伝子ノックアウト(KO)マウス
3.6 病態モデル動物使用の実験例
4 培養細胞
実施例1 乳性タンパク質による骨芽細胞様細胞の増殖・分化の促進
実施例2 β―ラクトグロブリン加水分解物中に存在するコレステロール吸収阻害ペプチドの同定
実施例3 食品由来ポリフェノールの膵臓がん細胞成長への阻害効果の検証
実施例4 非グリセミック甘味料によるヒト甘味受容体の活性化の検証
5 転写因子
5.1 転写因子の構造
5.2 代謝調節と転写因子
5.3 転写因子活性評価法
5.4 転写因子活性評価法の実施例
5.5 機能性食品成分探索への利用
6 バイオマーカー
6.1 血清プロテオミクスによる同定
6.2 酸化ストレスバイオマーカー
6.3 抗体チップ作製
第Ⅳ編 機能性食品とニュートリゲノミクス
1 概 論
1.1 機能性食品科学
1.2 先端ライフサイエンス
1.3 ニュートリゲノミクス
1.4 オミクスの長所と短所
1.5 ニュートリゲノミクス研究の報告例
1.6 機能性食品マーカーの開発とオミクス
1.7 T・P・M連動(co―ordination)の試み
1.8 オミクスは食品システム生物学のツールボックス
2 解 析 法
2.1 DNAマイクロアレイ実験
2.2 データの正規化
2.3 データ解析Ⅰ―巨視的解析
2.4 データ解析Ⅱ―発現量が異なる遺伝子の抽出
2.5 データ解析Ⅲ―統計学的に発現量変動が観察された遺伝子について
3 実 施 例
3.1 食餌タンパク質摂取の影響
3.2 低アレルゲン化小麦粉
3.3 分離大豆タンパク質
3.4 ココアの抗肥満作用に関するDNAマイクロアレイ解析
3.5 オリゴ糖
3.6 ローヤルゼリー
4 味覚ゲノミクス
4.1 味蕾に発現するイオンチャネルの解析
4.2 末梢感覚神経節の遺伝子発現プロファイリング
4.3 魚類味覚受容体の発見
5 安全性ゲノミクス
6 臨床ゲノミクス
6.1 炎症とゲノミクス
6.2 寿命とゲノミクス
6.3 糖質・脂質代謝とゲノミクス
6.4 栄養・機能性食品とゲノミクス
7 個人差のゲノム情報
7.1 栄養スニップ
7.2 病態スニップ
索 引
執筆者紹介
【編集委員】
荒井綜一,阿部啓子,金沢和樹,吉川敏一,渡邊昌
(編集幹事)上原万里子
【執筆者(執筆順)】
荒井綜一,森山達哉,河村幸雄,清水誠,吉川正明,水野雅史,八村敏志,木曽良信,河島洋,石倉義之,宮澤陽夫,池田泰隆,村上明,大東肇,寺尾純二,石見佳子,長尾昭彦,板東紀子,中村宜督,大澤俊彦,下位香代子,熊澤茂則,中山勉,金沢和樹,上原万里子,森光康次郎,中谷延二,朝倉富子,佐々木敏,卓興鋼,渡邊昌,勝間田真一,阿部啓子,三坂巧,佐藤隆一郎,内藤裕二,吉川敏一,松本一朗,加藤久典,橘伸彦,髙松清治,亀井優徳,深澤朝幸,三島敏,武田英二,奥村仙示,新井英一,西野輔翼