造園学概論

亀山 章(監修)/小野 良平一ノ瀬 友博(編)

亀山 章(監修)/小野 良平一ノ瀬 友博(編)

定価 3,960 円(本体 3,600 円+税)

A5判/216ページ
刊行日:2021年09月01日
ISBN:978-4-254-44031-7 C3061

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内容紹介

広範な領域に及ぶ造園学の全体像をわかりやすく体系的にまとめた教科書。参考文献リスト付〔内容〕対象と方法/歴史/国土計画・都市計画/公園・緑地計画/風景・景観計画/生態系の計画/緑地・植栽計画/設計・施工/管理・運営/展望

編集部から

○「刊行の趣旨」より抜粋〔亀山 章〕
 造園学は園(その)を造る学問と書く.かつて,明治時代に建築学は造家学と言われていたことがある.その造家に対して造園を対比させるとわかりやすい.家には庭があり,街には公園があり,都市にはその周辺に自然公園や自然保護地がある.そのなかで建物自体や建物におおわれた空間,つまり建蔽(ぺい)された空間をつくるのが造家・建築であり,その周辺に建蔽されていない空間をつくるのが造園である.建蔽されていない空間は,建蔽された空間の機能を補完して,一体としての家・庭,街・公園,都市・自然のシステムを形成する.庭や公園や自然公園・自然保護地は造園が扱う主要な空間である.造園が扱うこれらの空間は,建蔽されていないことからオープンスペース(open space)と呼ばれる.造園の園はオープンスペースのことである.
 園は昔から庭園の意味で使われ,また,学びの園,などのように場所をあらわす意味で使われてきた.オープンスペースである園に何を求めるか,どのような空間を形成するか,それを考えるのが造園の主要な課題である.課題は時代と共に推移するものであり,歴史的に見れば,都市化と工業化の進展に合わせて衛生・保健・快適さ(アメニティ)の確保,レクリエーションの場,地域コミュニティの創出,歴史文化の保護,風景・景観の保全,自然性の保護,生物多様性の保全など多くのニーズを受け入れてきている.その際に,常に美しいものを求めるのが人間の生存に欠かせない大きな前提となっている.
(中略)
 本書は造園学の教科書として編集したものである.教科書の目的は,学術の分野の全体像を示すことであり,これまでに蓄積されてきた理論と技術の成果を取りまとめ,さらには学術のこれからの方向性を指し示すものである.読者の対象は,造園学の入門者を第一に想定しているが,それだけではなく,造園学の諸分野を学習してきた人たちが,自らが得てきた知識や技術を体系化するのに役立つことを意図している.それは,体得してきた学術の成果が問われる技術士などの資格試験や公務員などの試験において有用なものとなるはずである.さらには,研究者や技術者に,自分がよって立つ学術の座標軸を示す役割もあるであろう.
 
○「まえがき」より抜粋〔小野良平・一ノ瀬友博〕
 日本における造園学の教科書は,およそ百年前の大正7年(1918)に田村剛が著した『造園概論』がその先駆けといえるが,その後今日に至るまで刊行された教科書は,さほど多くはない.その中で1986年に朝倉書店から出版された高橋理喜男らの共著による『造園学』は,当時の造園学の体系を示し以降の定番的存在となった.それから35年を経て造園学が対象とする範囲は大きく拡大し,人と自然をつなぐ学問分野として造園学に対する社会的な要請はますます高まってきた.そこで本書は,造園初学者にその全体像を概観してもらうことを目的として編集された.
 本書は,10章からなるが,その章立て自体が造園学の体系を示すような構成とした.ただし学問の範囲や枠組みは時代の中で変化,展開をするものであるので,これまでを踏まえた現在の造園学の方法と対象について最初の1章で整理し,これを編者の一人の小野が担当した.その上で,続く2章から9章までは,現在の造園学の各論について,その領域を代表して大学で教育・研究に携わる方々に執筆いただいた.そして最後の10章では,展開を続ける造園学についての,最新のトピックを交えた今後の展望を,もう一人の編者の一ノ瀬が論じて全体の締めくくりとした.

目次

1. 造園学の対象と方法〔小野良平〕
 1.1 造園
 1.2 造園学
2. 造園の歴史〔井原 縁〕
 2.1 日本庭園史
 2.2 東西庭園史
 2.3 公共造園史
3. 都市・農村・国土計画〔村上暁信〕
 3.1 都市計画
 3.2 農村計画
 3.3 国土計画
4. 公園緑地計画〔赤澤宏樹〕
 4.1 都市のオープンスペースとしての公園緑地
 4.2 公園緑地の構成
 4.3 公園緑地計画
 4.4 公園緑地の施設計画
5. 風景・景観計画
 5.1 風景計画〔山本清龍〕
 5.2 都市景観計画〔竹内智子〕
6. 生態系の計画〔今西純一〕
 6.1 生態系の計画の視点
 6.2 景観〜生態系レベルの計画
 6.3 種〜遺伝子レベルの計画
 6.4 生態系の管理
 6.5 環境影響評価
7. 緑化・植栽設計〔高橋輝昌〕
 7.1 造園植物
 7.2 植栽基盤
 7.3 植栽の管理
8. 造園設計・施工〔荒井 歩〕
 8.1 造園計画・設計
 8.2 造園施工と施工管理
9. 造園管理・運営〔竹内智子〕
 9.1 造園管理の種類と特性
 9.2 造園管理の目的
 9.3 管理計画
 9.4 財産管理
 9.5 運営管理
 9.6 維持管理
 9.7 安全対策・災害時の対応
 9.8 市民参加・市民協働・多様な主体による管理運営
10. 造園学の展望〔一ノ瀬友博〕
 10.1 造園学の領域拡大
 10.2 グリーンインフラ
 10.3 生態系減災
 10.4 これからの造園学
付 録
参考書
索 引

執筆者紹介

監修者
亀山 章  東京農工大学・名誉教授

編集者
小野良平  立教大学観光学部・教授
一ノ瀬友博 慶應義塾大学環境情報学部・教授

執筆者
赤澤宏樹  兵庫県立大学自然・環境科学研究所・教授
荒井 歩  東京農業大学地域環境科学部・教授
一ノ瀬友博 慶應義塾大学環境情報学部・教授
井原 縁  奈良県立大学地域創造学部・教授
今西純一  大阪府立大学大学院生命環境科学研究科・教授
小野良平  立教大学観光学部・教授
高橋輝昌  千葉大学大学院園芸学研究院・准教授
竹内智子  千葉大学大学院園芸学研究院・准教授
村上暁信  筑波大学システム情報系・教授
山本清龍  東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授

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