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シリーズ〈これからの基礎物理学〉 1 初歩の統計力学を取り入れた 熱力学
小野 嘉之(著)
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内容紹介
理科系共通科目である「熱力学」の現代的な学び方を提起する画期的テキスト。統計力学的な解釈を最初から導入し,マクロな系を支えるミクロな背景を理解しつつ熱力学を学ぶ。とりわけ物理学を専門としない学生に望まれる「熱力学」基礎。
編集部から
理系学部2年次程度で学ぶ熱力学の標準的内容を平易に解説する教科書。とくに統計力学(および量子力学)の初歩的知識を早い段階で導入する点を著しい特色とした内容構成。
伝統的な物理教育では,マクロな系(熱力学)とそのミクロな理解(統計力学)は別個に講じられてきた。しかしミクロな系の理解と応用が広がる現代にあって,マクロな物理法則を学ぶ際に,ある程度ミクロな背景をも理解しておくことの意義は大きい。本書は,物理系学生には熱力学と統計力学の自然な連関を示し,他の理系学生には熱力学法則の統計力学的な理解を与える。熱力学の現代的な学び方を提起する。
◎シリーズ刊行にあたって
編集委員 鹿児島誠一・米谷民明
本シリーズは,理工系・生命系における学部1・2 年生向けの物理教育を現代的内容へと抜本的に改めることを目指して企画された。大学の理科系専門課程を終えて社会に巣立つ人材に対し,現代人共通の科学的素養としての物理学の知識を提供することがそのねらいである。
従来,理科系の物理教育では,共通科目として古典力学,古典電磁気学,熱力学が教えられてきた。これらが現代物理学の基礎であると同時に,科学・工学全般の基礎ともなっていることは言うまでもない。一方,科学技術の発展にともなって,これまで物理系学科の専門教育で講じられてきた量子力学,相対論,統計力学についても,その初歩的な考え方は理科系共通の基礎知識となりつつある。また,これらの“少し進んだ”内容を取り入れることにより,様々な物理的概念にいっそう明確な基礎づけがなされ,理解が深まるであろう.本シリーズは,こうした考えの実践である。
今後,物理学の体系の素晴らしさや応用の広がりを伝え,さらなる興味をかき立てるような物理教育がますます望まれる。本シリーズが物理学の現代的な学び方を示す一つの指針となることを期待する。
*続刊
2.初歩の量子力学を取り入れた 古典力学 … 窪田高弘[著] 新刊
3.初歩の相対論を取り入れた 電磁気学 … 米谷民明[著]
目次
1. 熱と温度とエントロピー
1.1 熱の概念
1.2 温度
1.3 ボイル-シャルルの法則―理想気体の状態方程式
1.4 平衡,非平衡と熱力学第0法則
1.5 熱機関の効率 カルノー・サイクル
1.6 熱機関の効率と熱力学第2法則
1.7 いろいろな熱機関のモデル
1.8 熱力学基本法則のまとめ
2. 熱力学と統計力学―エントロピーが意味するもの
2.1 気体分子運動論―マックスウェル分布
2.2 理想気体の熱容量
2.3 ボルツマン方程式とH定理
2.4 統計力学におけるエントロピー
2.5 量子力学における「状態」
2.6 ミクロカノニカル分布で理想気体を扱う
3. いろいろな自由エネルギーと熱力学関係式
3.1 熱力学環境と自由エネルギー
3.2 化学ポテンシャル
3.3 熱力学的な系の安定条件
3.4 示量性変数と示強性変数
3.5 温度が一定である系の統計力学
3.6 熱放射の熱力学・統計力学
3.7 ギブスのパラドックス
3.8 熱力学的関係式のまとめ
4. 相互作用を取り入れた熱力学
4.1 非理想気体―ファンデルワールスの状態方程式
4.2 ファンデルワールスの状態方程式による気相-液相転移
4.3 潜熱の計算
4.4 状態方程式のビリアル展開
4.5 気体の冷却
5. 相転移の熱力学
5.1 相図と相転移の分類
5.2 1次相転移の一般論
5.3 2次相転移の一般論
6. 磁性体の熱力学
6.1 磁性体のモデル
6.2 強磁性体の相転移―熱力学的取り扱い
6.3 強磁性体の統計力学的取り扱い
6.4 履歴現象(ヒステリシス)について
7. ゆらぎと観測量
7.1 熱容量とエネルギーのゆらぎ
7.2 帯磁率と磁化のゆらぎ
A. 熱力学・統計力学でよく用いる数学
A.1 偏微分
A.2 ガウス積分
A.3 n次元球の体積
A.4 Γ関数とスターリングの公式
B. 大数の法則と中心極限定理
B.1 大数の法則
B.2 中心極限定理
C. 熱力学で用いる物理量の単位
D. スピンおよびスピン間相互作用について
D.1 スピン角運動量
D.2 スピン間相互作用
文献
索引
執筆者紹介
【編集】
鹿児島 誠一
米谷 民明
【著者】
小野 嘉之(前東邦大学)