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海の温暖化 ―変わりゆく海と人間活動の影響―
日本海洋学会(編)
内容紹介
地球温暖化の進行に際し海がどのような役割を担っているかを解説〔内容〕海洋の観測/海洋循環/海面水位変化/極域の変化/温度と塩分/物質循環/貧酸素化/海洋酸性化/DMS・VOC/魚類資源・サンゴ礁への影響/古海洋/海洋環境問題
編集部から
・地球温暖化の緩和において,二酸化炭素の吸収など大きな役割を担う一方,海面上昇など大きな影響も受ける可能性がある"海"について包括的に解説。
・十分に知られていない海について,正確な知識とその変化のありようを提示。
・海洋物理から化学組成,生態系や水産業への影響など,多様なテーマをコンパクトに1冊にまとめる。
目次
1. 地球温暖化の現状と課題 〔河宮未知生〕
1.1 地球温暖化のしくみ
1.2 二酸化炭素濃度の上昇
1.2.1 二酸化炭素濃度の観測
1.2.2 人間活動による二酸化炭素排出と自然の炭素循環
1.3 地球温暖化の現状
1.4 気候の将来予測
1.4.1 数値気候モデルによる予測結果
1.5 温暖化予測の問題点
2. 海洋物理
2.1 観測された海の変化〔須賀利雄〕
2.1.1 温度と貯熱量
2.1.2 塩分と淡水収支
2.1.3 風成循環
2.1.4 深層循環
2.2 将来の海の変化〔羽角博康〕
2.2.1 温度と塩分
2.2.2 風成循環
2.2.3 深層循環
2.3 極域の変化
2.3.1 南大洋〔青木 茂〕
2.3.2 北極〔菊地 隆〕
2.4 海面水位変化〔鈴木立郎・安田珠幾〕
2.4.1 海面水位はなぜ変化するのか
2.4.2 現在までの海面水位変化
2.4.3 今後予測される海面水位変化
コラム1 オホーツク海の変化〔大島慶一郎〕
3. 海の物質循環の変化
3.1 海の炭素循環 〔石井雅男〕
3.1.1 生物活動と物質循環
3.1.2 生物ポンプ
3.1.3 人為的に排出された二酸化炭素のゆくえ
3.2 海の貧酸素化 〔笹野大輔〕
3.2.1 外洋域の貧酸素化
3.2.2 沿岸域の貧酸素化
3.2.3 貧酸素化の影響
3.2.4 貧酸素化の今後の動向
3.3 二酸化炭素を吸収する海
3.3.1 二酸化炭素の溶液化学 〔石井雅男〕
3.3.2 海と大気の二酸化炭素交換 〔中岡慎一郎〕
3.3.3 海の二酸化炭素増加と酸性化 〔石井雅男〕
3.3.4 河川から海洋への炭素流入 〔小杉如央〕
3.4 海の生物活動に由来する短寿命微量気体と気候の関わり〔亀山宗彦〕
3.4.1 はじめに
3.4.2 CLAW仮説とDMSを中心とした硫黄循環
3.4.3 ハロカーボン
3.4.4 非メタン炭化水素
3.4.5 含酸素揮発性有機化合物
3.5 北極海における物質循環の変化〔川合美千代〕
3.5.1 一次生産量の変化
3.5.2 沿岸域での物質循環の変化
3.5.3 海洋酸性化
4. 海洋酸性化
4.1 海洋生物への影響 〔諏訪僚太〕
4.1.1 植物プランクトン 〔栗原晴子〕
4.1.2 海藻・海草類 〔栗原晴子〕
4.1.3 動物プランクトン 〔栗原晴子〕
4.1.4 底生生物〔諏訪僚太〕
4.1.5 魚類〔諏訪僚太〕
4.2 海洋生態系への影響 〔栗原晴子〕
4.2.1 外洋域
4.2.2 沿岸域
4.2.3 極域
4.3 人間社会への影響〔栗原晴子・藤井賢彦〕
4.4 海洋酸性化の将来予測〔藤井賢彦〕
4.5 対 策 〔藤井賢彦〕
5. 海洋生態系への影響
5.1 魚類の回遊の生理・生態に与える影響の概念 〔木村伸吾〕
5.1.1 顕在化する温暖化の影響
5.1.2 温暖化の影響の攪乱要因
5.1.3 関連する変動メカニズム
5.1.4 温暖化研究の意義
5.2 タラ・サケ類などの国際的な魚類資源の動向と予測〔伊藤進一〕
5.2.1 国際的な魚類資源の動向
5.2.2 タラ類の動向
5.2.3 タラ類への地球温暖化の影響評価
5.2.4 サケ類への地球温暖化の影響
5.3 日本にとって重要な魚類資源の動向と予測
5.3.1 マイワシ・カタクチイワシ資源 〔竹茂愛吾〕
5.3.2 サンマ資源 〔渡邊良朗〕
5.3.3 マグロ類資源〔木村伸吾〕
5.3.4 イカ類資源 〔岩田容子〕
5.3.5 岩礁資源 〔三宅陽一〕
5.4 温暖化と海洋動物の感染症 〔良永知義〕
5.4.1 海外の事例
5.4.2 国内の潜在的リスク―養殖
5.4.3 潜在的リスク―野生動物
5.4.4 ヒトの健康へのリスク
5.4.5 感染症という観点からみた海洋温暖化へ対応
5.5 サンゴ礁域における影響 〔川幡穂高〕
コラム2 死滅回遊魚―地球温暖化の代弁者? 〔瀬能 宏〕
6. 古気候・古海洋環境変動 〔岡崎裕典・関宰・近本めぐみ・原田尚美〕
6.1 地球史における現在気候の位置づけ―新生代氷河時代
6.2 異なる時間スケールにおける気候変動と海
6.2.1 プレートテクトニクスが支配する100万年スケールの変動
6.2.2 地球の軌道要素が支配する数万年から10万年スケールの変動
6.2.3 海洋循環が支配する1000年スケールの変動
6.3 過去の顕著な温暖化
6.3.1 PETM(5600万年前
6.3.2 中期鮮新世の温暖期(330万~300万年前)
6.3.3 最終退氷期(2万~1万年前)
6.4 人類活動と地質記録
6.4.1 Anthropocene―人類の時代
6.4.2 人類が排出した二酸化炭素のゆくえ
6.4.3 人類が利用している資源の素性
7. 海洋環境問題
7.1 福島―放射性物質の挙動 〔升本順夫〕
7.1.1 海洋への放射性物質の流入経路と漏洩量・流入量の見積もり
7.1.2 事故後数か月の福島付近での挙動
7.1.3 北太平洋の広域での広がり
7.1.4 さらに考えなければならないこと
7.2 瀬戸内海の栄養塩異変〔多田邦尚〕
7.2.1 瀬戸内海,その過去と現在
7.2.2 瀬戸内海の栄養塩濃度減少
7.2.3 瀬戸内海の栄養塩濃度減少がもたらすもの
7.3 瀬戸内海西部における赤潮の変遷 〔吉江直樹〕
7.3.1 瀬戸内海における赤潮と栄養塩の長期変動
7.3.2 豊後水道におけるカレニア赤潮の影響とカレニアの生理特性
7.3.3 豊後水道東岸におけるカレニア赤潮の時空間変動と環境要因との関連性
7.4 マイクロプラスチック
7.4.1 汚染の現状〔磯辺篤彦〕
7.4.2 有害化学物質の輸送媒体としてのマイクロプラスチック 〔高田秀重〕
コラム3 温暖化と重金属 〔板井啓明〕