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講座 感覚・知覚の科学 1 視覚I ―視覚系の構造と初期機能―
内容紹介
〔内容〕眼球光学系-基本構造-(鵜飼一彦)/神経生理(花沢明俊)/眼球運動(古賀一男)/光の強さ(篠森敬三)/色覚-色弁別・発達と加齢など-(篠森敬三・内川惠二)/時空間特性-時間的足合せ・周辺視など-(佐藤雅之)
編集部から
何年か前に『視覚情報処理HB』が刊行されたとき,心理学・生理学と情報処理を統合した本書はなかなか売りにくいのではとひそかに思っていた。しかしそれは私の不見識であり,その後の在庫表の推移を見てもコンスタントな注文が続き,9か月で重版したことが今でも印象に残っている。
本講座は上記HBの総編集者である東工大内川先生が,「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚全体を科学の視点で体系的に解説した本があるようでないのです」という提起をもとに企画されたものと聞いている。
柏木さん,末吉君からこの企画を引き継いだが,その後かなり腰が重かった内川先生もある時点で「やるなら一気にお互いが協力して完結にこぎつけましょう」ということになった。それからがすごいのです。徹底的な催促態勢をとり,たとえば「3月10日午前0時締切り」と設定し,10日の午前9時からは「なぜ発送が遅れたか理由を聞きたい」という電話・メール攻勢となった。ある著者は「学内の仕事が重なり,その締切りを守ろうとすると大学を辞めざるをえない状況なのです」と訴えて来られた。普通なら「それでは来月でも結構ですから…」となるのだろうが,「エエ,大学を辞めても構いませんから原稿を書きなさい」というのが総編集者のお返事だった。
それだけ濃密な関係をもつ先生方が一気に書き上げた(早期にいただいた原稿はもちろん書き直してもらった)講座がこの秋から順次刊行される。
動物界でも異常に発達進化した我々人間の視覚ひとつとっても,脳との情報伝達・処理がどのようになされているか,現在に研究の到達点が体系的に詳述されている。
書籍の販売は,著者の「その本に対する熱意」に負うところも多分にある。その意味で本講座が多くの読者から支持されることを祈る。(森田)
【書評】
「日本バーチャルリアリティ学会誌 2008年6月号」の「BOOK REVIEW」欄で、
三浦貴大氏により,『視覚Ⅰ』と『視覚Ⅱ』について,「・・・目次に載せてある学習の指針のおかげで,重要な項目を注意深く意識できるよう読者は促される。文章も平易で,図も多く,理解を助ける細かい配慮がなされている。したがって,感覚・知覚系を体系的かつ横断的に過不足なく学習するには本書は適切である。・・・」と,ご紹介いただきました。
目次
1 眼球光学系
1.1 基本構造
1.2 光学要素と近軸特性
1.3 収差と回折
1.4 像伝達特性
1.5 瞳孔
1.6 調節
1.7 まばたき
2 神経生理I ―網膜からV1まで―
2.1 視覚生理学の基礎知識
2.2 光から電気信号への変換
2.3 網膜神経節細胞,外側膝状体細胞における画像情報の符号化
2.4 V1の機能
3 神経生理II ―高次の視覚領野―
3.1 V2
3.2 背側経路
3.3 腹側経路
4 眼球運動
4.1 眼球運動の仕組みと生理学的知見
4.2 眼球運動の種類
4.3 測定法
5 光の強さ
5.1 絶対閾
5.2 増分閾
5.3 視環境の明るさ変化への対応
5.4 視感効率(比視感度)
5.5 明るさ知覚
6 色覚I ―色の知覚と特性―
6.1 錐体分光感度
6.2 色弁別
6.3 反対色応答
6.4 明るさ
6.5 色覚モデル
7 色覚II ―色の見えとその多様性―
7.1 色の見え
7.2 カテゴリカル色知覚
7.3 色の恒常性と色順応
7.4 色弱(先天色覚異常)
7.5 発達と加齢
8 時空間特性I ―時空間応答と周波数チャンネル―
8.1 視力と超視力
8.2 空間的足し合わせ
8.3 空間的コントラスト感度
8.4 時間的足し合わせ
8.5 時間的コントラスト感度とインパルス応答
9 時空間特性II ―色覚,時空間的相互作用,周辺視―
9.1 色覚の時空間特性
9.2 視覚マスキング
9.3 視覚的持続
9.4 周辺視I ―構造的な相違―
9.5 周辺視II―周辺視における特性―
索引
執筆者紹介
【執筆者】
鵜飼一彦,花沢明俊,古賀一男,篠森敬三,内川惠二,佐藤雅之
(執筆順)