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内容紹介
現代地質学を確立した「地質学の父」とされるチャールズ・ライエルの古典的名著を,地質学史研究の第一人者ジェームズ・シコードが縮約して,詳しい解説を付したもの。地質学・地球科学・生物学(進化)・科学史に関心のある人々の必読書。
編集部から
本書の原書は,チャールズ・ライエル(1797─1875)が著した『地質学原理』で,全3巻,1400ページに及ぶ大著です。その第I巻は1830年,第II巻は1832年,第III巻は1833年にそれぞれ刊行されました。現代の読者に読みやすいように,J.A.シコード(ケンブリッジ大学講師)がダイジェストして解説を付したものがペンギン・ブックスの古典叢書のうちの1冊として刊行されており,その抄訳本を日本語にしたものが本書です。(上)に原書の第I巻,(下)に原書の第II巻と第III巻が収められています。
地球の進化の歴史を実証的に解説し,従来は宗教・神話・物語といった形で語られていた創世記から「科学」を分離・独立させ,地質学という学問分野を確立させることとなった名著です。
『地質学原理』というタイトルは原書の表題そのものですが,「原理」という言葉を使ったのはライエルがニュートンの『プリンキピア』(自然哲学の数学的諸原理, 1687年刊)を意識していたものと思われます。『プリンキピア』はニュートン力学の確立を示し,近代科学の方法論に大きく貢献した古典ですが,『地質学原理』は地質学・地球科学を確立し,『地質学原理』に大きな影響を受けたダーウィンは1859年に『種の起源』を刊行して,進化論を確立することとなりました。本書の原書(抄訳本)は現在でもアメリカ等の大学でテキストとして読まれており,本書は日本でも地質学に興味のある方々に歓迎されるものと思います。
訳者の河内洋佑先生は,北海道大学理学部・大学院から通産省工業技術院地質調査所に入り,40代でニュージーランドのオタゴ大学のリサーチ・フェローとなり,20年以上オタゴ大学で教育・研究に携わってこられた方です。正確で読みやすく,なおかつ原書刊行時の時代背景を意識した,細心の翻訳となっています。(小畑)