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朝倉農学大系 9 土壌学
内容紹介
土壌学の基礎から応用・先端までを2部構成で体系的に解説。〔内容〕基礎編:概念・構成/無機固相成分/土壌有機物(SOM)/土壌生物の種類/生成と分類/物理的作用/化学的作用/生物機能/物質循環と土壌の働き/応用編:日本の主要な土壌/熱帯・亜熱帯・温帯の代表的な土壌/冷温帯・亜寒帯・寒帯の土壌/土壌肥沃度管理/土壌と環境
編集部から
本書は,農学の中心的な科目の一つである「土壌学」について,基礎から応用,先端までの充実した内容を網羅した骨太な教科書です.学部学生が本書を参照することで講義内容の発展的理解が得られること,大学院生が本書を通読することで土壌学を理論的・体系的に理解できること,また,土壌学や関連分野の研究者にも有益な情報や最新の知見を提供することを目指して,本書の編集に取り組みました.(略)
近年,地球規模の環境変動や食料不足が深刻な問題となっており,国内においても食料自給率の向上および環境保全型農業の推進が求められています.地球規模の環境変動に関しては,「地球温暖化・地球環境変動が臨界点を超える瀬戸際」という,かつて人類が経験したことのない危機的状況に直面しています.環境保全と食料生産の両立を持続的に実現するため,私たちはこれまでの土壌学研究で蓄積された成果を総動員し,さらに進歩させて,地球温暖化を緩和し,環境変動を最小限に抑え,持続的な食料生産を強力に推し進めていかなければなりません.地球環境が激変する渦中において,土壌学の果たすべき役割もますます大きくなっています.本書によって土壌の役割や重要性が伝わり,土壌への理解と生態系の保全が進むことによって,持続的な食料生産と人間社会の安定的発展に繋げられることを願ってやみません.(本書序文より)
デジタル付録の利用はこちらから
https://www.asakura.co.jp/websupport/978-4-254-40579-8/
目次
I. 基礎編 土壌の構成要素と機能
第1 章 土壌とは・土壌科学とは
1. 1 私たちの身近な土壌
1. 1. 1 土壌の定義
1. 1. 2 土壌の役割
1. 2 土壌構成成分の種類とサイズ(スケール)
1. 3 地球環境の現状と土壌科学の挑戦
1. 3. 1 歴史的背景
1. 3. 2 地球環境と土壌
1. 3. 3 土壌科学の新たな挑戦
第2 章 土壌の無機固相成分
2. 1 土壌固相の物理構造
2. 1. 1 土壌に占める固相の割合
2. 1. 2 土壌固相の密度
2. 1. 3 土壌固相の粒径とその組成
2. 1. 4 土壌固相が作り出す立体的なフレーム構造と孔隙
2. 2 土壌固相中の無機成分
2. 2. 1 元素組成
2. 2. 2 土壌固相の結晶性
2. 2. 3 土壌の無機固相成分の起源としての岩石
2. 3 一次鉱物
2. 4 二次鉱物
2. 4. 1 層状ケイ酸塩鉱物
2. 4. 2 酸化物鉱物,その他の鉱物
2. 4. 3 リン酸塩鉱物,炭酸塩鉱物,硫化鉱物,硫酸塩鉱物
第3 章 土壌有機物(SOM)
3. 1 有機物の分解と土壌有機物の形成
3. 2 土壌有機物の機能
3. 3 土壌有機物の起源物質とその分解
3. 3. 1 植物・微生物バイオマスの構成成分
3. 3. 2 バイオマスの分解
3. 3. 3 植物リターの質と微生物分解
3. 3. 4 分解の規定因子
3. 4 土壌有機物の化学的特徴
3. 5 土壌有機物と鉱物の相互作用
3. 6 土壌有機物の安定化メカニズム
3. 7 土壌有機物の分画法
3. 7. 1 物理的分画
3. 7. 2 化学的分画
3. 7. 3 土壌有機物中の特定成分の分画
3. 8 土壌有機物の分解と安定化の共時性
第4 章 土壌生物の種類
4. 1 土壌微生物
4. 1. 1 概説:微生物とは何か
4. 1. 2 細菌の種類(分類)
4. 1. 3 アーキアの種類(分類)
4. 1. 4 菌類の種類(分類)
4. 1. 5 藻類の種類(分類)
4. 1. 6 ウイルス,ファージ
4. 1. 7 土壌微生物の量(数,バイオマス)
4. 2 土壌動物
4. 2. 1 土壌動物の分類
4. 2. 2 土壌動物のおもな分類群の特徴
4. 2. 3 土壌中での土壌動物の分布とバイオマス
第5 章 土壌の生成と分類
5. 1 土壌の生成を促す基礎的因子と基礎的反応
5. 1. 1 土壌生成因子
5. 1. 2 風化作用
5. 1. 3 風化にともなう元素組成変化と風化ポテンシャル指数
5. 1. 4 二次鉱物の生成
5. 1. 5 土壌有機物の蓄積
5. 2 土壌生成のプロセス
5. 2. 1 土壌の層位分化
5. 2. 2 土壌生成作用
5. 2. 3 多元土壌と古土壌
5. 2. 4 残積土と累積土
5. 3 土壌の分類
5. 3. 1 土壌分類における自然的要素と実用的要素
5. 3. 2 国際的な土壌情報交換ツールとしての土壌分類
5. 3. 3 アメリカ合衆国の土壌分類:US Soil Taxonomy
5. 3. 4 国連食糧農業機関(FAO)の土壌分類:WRB
5. 3. 5 日本の土壌分類:日本土壌分類体系(2017)
第6 章 土壌の物理的作用と働き
6. 1 土壌水分
6. 1. 1 土壌水の量
6. 1. 2 土壌水のポテンシャル
6. 1. 3 土壌の保水性
6. 2 水移動
6. 2. 1 流れの単位
6. 2. 2 ハーゲン-ポアズイユ則
6. 2. 3 バッキンガム-ダルシー式
6. 2. 4 不飽和透水係数と重力流れ
6. 2. 5 浸潤
6. 2. 6 蒸発
6. 2. 7 連続式とリチャーズ式
6. 3 土中空気
6. 3. 1 土中空気の組成
6. 3. 2 ガスの移動
6. 3. 3 ガスの拡散
6. 3. 4 水蒸気の移動
6. 4 土壌温度
6. 4. 1 熱収支
6. 4. 2 地温分布の変動
6. 4. 3 熱の移動
6. 5 水溶性化学物質の移動
6. 5. 1 化学物質の移動様式
6. 5. 2 分子拡散
6. 5. 3 移流
6. 5. 4 水力学的分散
6. 5. 5 吸着が溶質移動に与える影響
第7 章 土壌の化学的作用と働き
7. 1 土壌溶液
7. 1. 1 土壌溶液のイオン組成
7. 1. 2 土壌溶液における錯体生成反応
7. 1. 3 イオンの水和と加水分解
7. 2 土壌固相の溶解
7. 2. 1 一次鉱物の溶解
7. 2. 2 溶解度積定数とイオン活量積(IAP)
7. 2. 3 溶解度ダイアグラム
7. 3 収着
7. 3. 1 収着生成物としての外圏錯体と内圏錯体
7. 3. 2 収着にかかわる固相成分の化学構造と反応特性
7. 3. 3 陽イオンの吸着
7. 3. 4 陰イオンの吸着
7. 3. 5 表面沈殿
7. 3. 6 各種イオンの収着メカニズムと収着生成物(まとめ)
7. 3. 7 収着反応のモデル
7. 4 土壌の酸性とアルカリ性
7. 4. 1 植物生育に及ぼす土壌pH の影響
7. 4. 2 土壌の酸性化とアルカリ性化
7. 4. 3 酸性土壌における酸の存在形態
7. 4. 4 アルカリ性土壌における塩基の存在形態
7. 5 土壌の酸化と還元
7. 5. 1 還元半反応の平衡定数K ° とpH およびpe
7. 5. 2 酸化還元電位Eh
7. 5. 3 土壌の還元と物質変化
第8 章 土壌の生物機能
8. 1 土壌動物・微生物の役割:土壌における食物網
8. 2 土壌微生物の物質変換機能
8. 2. 1 炭素の動態にかかわる微生物の機能(炭素循環と微生物)
8. 2. 2 窒素の動態にかかわる微生物の機能(窒素循環と微生物)
8. 2. 3 硫黄循環と微生物
8. 2. 4 リンの動態と微生物
8. 2. 5 鉄,マンガン
8. 2. 6 化学物質の分解と微生物
8. 3 微生物成分の役割
8. 3. 1 土壌酵素
8. 3. 2 細胞外高分子物質
8. 4 植物生育と微生物
8. 4. 1 養分動態と土壌微生物
8. 4. 2 植物に共生して生育を助ける土壌微生物
8. 4. 3 根圏でのプロセス
8. 5 土壌動物の機能
8. 6 土壌生物の生息環境としての土壌
8. 6. 1 土壌環境と微生物
8. 6. 2 土壌のミクロ環境と微生物
8. 6. 3 土壌のマクロ環境と微生物
8. 7 土壌微生物研究の新しい手法
8. 7. 1 SIP 法:土壌で機能する微生物の特定
8. 7. 2 メタゲノミクス
8. 7. 3 NanoSIMS
第9 章 物質循環と土壌の働き
9. 1 物質循環とエネルギーの流れ
9. 2 必須元素の種類と循環様式
9. 2. 1 元素循環の概念モデルと用語
9. 2. 2 生態系をとりまく空間スケール
9. 2. 3 植物体内における生理的機能による必須元素の類型化(3 グループ)
9. 2. 4 元素循環の様式(大気タイプ・岩石タイプ)
9. 3 主要元素どうしのカップリング
9. 3. 1. 電子のやりとり:酸化還元カップリング
9. 3. 2. 生態化学量論
9. 4 分解プロセス
9. 4. 1 分解とは
9. 4. 2 土壌動物の役割
9. 4. 3 分解と養分バランス
9. 4. 4 分解プロセスのモデル化
9. 4. 5 酸化還元と分解
9. 5 炭素循環
9. 5. 1 地質学的時間スケール(炭酸塩・ケイ酸塩サイクル)
9. 5. 2 人類史的時間スケール
9. 5. 3 陸上生態系における炭素循環(数百年以下のサイクル)
9. 5. 4 土壌炭素(貯留量・変化量・規定因子)
9. 6 窒素循環
9. 6. 1 窒素の加入
9. 6. 2 窒素の内部循環
9. 6. 3 窒素の損失
9. 6. 4 窒素循環の時空間変動(ホットスポット・ホットモーメント)
9. 6. 5 グローバルスケール
9. 7 リン循環
9. 7. 1 リンの加入
9. 7. 2 リンの内部循環
9. 7. 3 リンの損失
9. 7. 4 グローバルスケール
9. 8 その他の元素の循環
9. 8. 1 硫黄循環
9. 8. 2 カリウム,カルシウム,マグネシウムの循環
9. 8. 3 微量必須元素と非必須元素の循環
II. 応用編 生態系・作物生産・環境と土壌
第10 章 日本の主要な土壌とその特徴
10. 1 森林の土壌
10. 1. 1 森林に分布する主要な土壌
10. 1. 2 森林土壌の特徴
10. 1. 3 森林土壌の理化学的性質
10. 1. 4 地形に対応した森林土壌相と森林管理
10. 2 畑地の土壌
10. 2. 1 畑地における土壌分類別面積
10. 2. 2 畑地の栽培管理と土壌環境
10. 2. 3 畑地の種別にみた土壌の特徴
10. 3 水田の土壌
10. 3. 1 水田の栽培管理と土壌環境
10. 3. 2 水田の乾湿
10. 3. 3 湛水期間中の還元状態と物質の形態変化
10. 3. 4 酸化還元にともなう層位分化とFe・Mn の移動集積
10. 3. 5 水田土壌の分類
第11 章 熱帯・亜熱帯・温帯の主要な土壌とその特徴
11. 1 湿潤熱帯・亜熱帯の土壌
11. 2 湿潤温帯の土壌
11. 3 乾燥地・半乾燥地の土壌
第12 章 冷温帯・亜寒帯・寒帯の主要な土壌とその特徴
12. 1 寒冷地域に分布する土壌の研究史
12. 2 永久凍土地帯の土壌の特徴
12. 3 高緯度の有機質土
12. 4 周極域の地域間比較
12. 5 地史と生態系の統合的理解
第13 章 農地生態系における土壌肥沃度管理
13. 1 植物必須元素の給源としての土壌の役割
13. 1. 1 土壌から供給される植物の必須元素
13. 1. 2 土壌養分の可給性
13. 1. 3 土壌から植物根への養分供給過程
13. 1. 4 植物根による土壌養分の可給化
13. 2 土壌肥沃度評価の概要と課題
13. 2. 1 土壌肥沃度の定義と農地での評価
13. 2. 2 土壌肥沃度評価法に関する課題
13. 2. 3 国内での土壌診断の普及状況
13. 3 肥料と施肥
13. 3. 1 肥料の定義と分類
13. 3. 2 肥料と施肥の歴史
13. 3. 3 化学肥料農業による食料増産と省力化
13. 3. 4 化学肥料農業の負の側面
13. 3. 5 環境に配慮した持続的農業の提唱と普及
第14 章 土壌と環境
14. 1 土壌汚染
14. 1. 1 栄養塩汚染
14. 1. 2 有害元素
14. 1. 3 放射性セシウム
14. 2 温室効果ガス
14. 2. 1 二酸化炭素(\(\mathrm{CO_2}\))の発生
14. 2. 2 メタン(\(\mathrm{CH_4}\))の発生と消費
14. 2. 3 一酸化二窒素(\(\mathrm{N_2O}\))の発生
14. 3 土壌劣化
14. 3. 1 土壌劣化の原因
14. 3. 2 土壌劣化の対策
索 引
コラム
植物必須元素
土壌と岩石に含まれる元素の種類と濃度
土壌有機物は歴史的にどのようにみられてきたか
滞留時間とは
腐植物質,腐植化作用
生体高分子の化学構造
堆肥ができる過程と堆肥の効能
土壌に関する量の定義
テンシオメーター
執筆者紹介
■編集者
妹尾啓史 東京大学大学院農学生命科学研究科
早津雅仁 農研機構農業環境研究部門
平舘俊太郎 九州大学大学院農学研究院
和穎朗太 農研機構農業環境研究部門
■執筆者(執筆順)
妹尾啓史 東京大学大学院農学生命科学研究科
和穎朗太 農研機構農業環境研究部門
平舘俊太郎 九州大学大学院農学研究院
早津雅仁 農研機構農業環境研究部門
多胡香奈子 農研機構農業環境研究部門
西村 拓 東京大学大学院農学生命科学研究科
中原 治 北海道大学大学院農学研究院
今矢明宏 森林研究・整備機構森林総合研究所
久保寺秀夫 農研機構農業環境研究部門
舟川晋也 京都大学大学院農学研究科
松浦陽次郎 森林研究・整備機構森林総合研究所
森塚直樹 高知大学農林海洋科学部
柴田英昭 前北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
荒尾知人 福島国際研究教育機構
山口紀子 農研機構農業環境研究部門
伊ヶ崎健大 国際農林水産業研究センター