BOOK SEARCH
朝倉農学大系 10 作物学
内容紹介
農作物(普通作物)を対象に作物学の基本的知識を解説。〔内容〕農学と作物学/人口問題、環境問題、エネルギー問題と農業/野生植物から作物へ(起源地、進化、多様化)/作物の形態/作物生産の生理学的基礎/作物の成長と生産過程/作物と環境/作物の栽培管理/作物生産と環境保全・持続性
編集部から
1976 年に作物学に関する一冊の書が農山漁村文化協会から出版された.タイトルは『作物の光合成と生態―作物生産の理論と応用―』であり,著者は当時の東京大学農学部作物学研究室教授村田吉男,同助教授玖村敦彦,同助手石井龍一であった.同書は,その当時の群落の物質生産理論やC\(_{4}\) 光合成の発見などの基礎植物学の成果を作物学に導入し,物質生産や光合成の面から作物の収量と生産力の本質を考え,栽培技術の理論的基礎を論ずる新たな作物学を提唱した意欲的著作であった.
それから約半世紀が経過したが,その間,村田らが作物生産の理論的基礎とした作物に関する光合成,耕地生態系,物質生産,作物と環境との相互作用などに関する研究はその後の多くの作物学研究者の貢献によりさらに深化し,また,細分化してきた.その成果は多数の優れた教科書として結実している(各章文献参照).さらに,最近のQTL解析技術を用いた光合成や収量関連形質の遺伝的解析や遺伝子同定などを通じて,作物学はいっそう進展している.
本書は,村田らと同じ研究室の後輩である3 代の教授が執筆した.村田らが示した新たな作物学のその後の展開と成果をコンパクトに示すとともに,それぞれの学問的興味も盛り込んだ執筆となっている. (本書序文より)
目次
第1 章 農学と作物学
1. 1 農学の中の作物学
1. 1. 1 農学の定義
1. 1. 2 農学の固有の特性
1. 1. 3 生産農学
1. 2 作物学と対象とする作物
1. 2. 1 作物学
1. 2. 2 作物
第2 章 人口問題,環境問題,エネルギー問題と農業
2. 1 人口問題
2. 1. 1 人口の動向
2. 1. 2 飢餓人口
2. 1. 3 今後の食料自給の見通し
2. 2 環境問題
2. 2. 1 IPCC 評価報告書
2. 2. 2 農業・食料生産と温暖化
2. 3 エネルギー問題
2. 4 今後の展望
第3 章 野生植物から作物へ─起源地,進化,多様化─
3. 1 作物の起源地
3. 1. 1 ドゥ・カンドルの栽培植物の起源
3. 1. 2 ヴァヴィロフの「微分的植物地理学」的手法による八大起源地
3. 1. 3 ハーランの三大中心地と非中心地
3. 1. 4 最近の起源地研究
3. 1. 5 起源地に関するコア・エリア仮説と長期多起源仮説
3. 2 作物化に関わる形質とその遺伝的要因の変化
3. 2. 1 作物化と形質
3. 2. 2 作物化に関わる形質の遺伝的要因の変化
3. 3 作物の多様化─イネを例として─
3. 3. 1 アジアイネの起源地
3. 3. 2 ジャポニカとインディカの分化
3. 3. 3 温帯ジャポニカと熱帯ジャポニカの分化
第4 章 作物の形態
4. 1 イネ科作物
4. 1. 1 葉
4. 1. 2 茎
4. 1. 3 根
4. 1. 4 花(穂)
4. 1. 5 子実(種子)
4. 2 マメ科作物
4. 2. 1 葉
4. 2. 2 茎
4. 2. 3 根
4. 2. 4 根粒
4. 2. 5 花
4. 2. 6 子実(種子)
4. 3 イモ類
4. 3. 1 葉
4. 3. 2 茎(地上茎,塊茎)
4. 3. 3 根(塊根)
4. 3. 4 花,果実,種子
第5 章 作物生産の生理学的基礎
5. 1 ソース-シンク関係
5. 2 ソースの機能─光合成─
5. 2. 1 還元的ペントースリン酸回路
5. 2. 2 光呼吸
5. 2. 3 C4 光合成
5. 2. 4 CAM
5. 2. 5 ソース葉におけるデンプンの合成と分解
5. 2. 6 ショ糖の合成,分解,転流
5. 2. 7 ソース葉内に蓄積するNSC 組成の種間差
5. 3 転流
5. 3. 1 師部転流のメカニズム─圧流説─
5. 3. 2 転流される光合成同化産物の普遍性と多様性
5. 3. 3 師部ローディング
5. 3. 4 師部アンローディング
5. 3. 5 貯蔵物質
5. 4 窒素,リン酸,硫黄の同化
5. 4. 1 窒素の吸収と同化
5. 4. 2 リン酸の吸収と同化
5. 4. 3 硫黄の吸収と同化
5. 5 呼吸(暗呼吸)
5. 5. 1 解糖系
5. 5. 2 酸化的ペントースリン酸回路
5. 5. 3 クエン酸回路
5. 5. 4 電子伝達系(呼吸鎖)
5. 5. 5 呼吸に関わる代謝経路の中間体
5. 5. 6 呼吸商と呼吸速度
第6 章 作物の成長と生産過程
6. 1 種子・種もの
6. 1. 1 種子の基本構造
6. 1. 2 種イモ
6. 2 発芽と初期生育
6. 2. 1 種子の休眠
6. 2. 2 発芽の過程と環境条件
6. 2. 3 発芽時のエネルギー供給
6. 3 出芽
6. 4 個体の栄養成長と葉面積の拡大
6. 4. 1 ファイトマー
6. 4. 2 葉の成長と老化
6. 4. 3 分枝の形成と成長
6. 5 個体群の成長および物質生産の評価
6. 5. 1 個体群の成長の定量的解析
6. 5. 2 層別刈取り法
6. 5. 3 倒伏
6. 6 花成と花芽形成
6. 7 開花と受精
6. 8 収穫器官の形成
6. 9 収量形成過程と収量構成要素
6. 10 収量形成過程と乾物分配
第7 章 作物と環境
7. 1 生産環境
7. 2 気象的環境
7. 2. 1 気温
7. 2. 2 大気
7. 2. 3 水
7. 3 土壌的環境
7. 3. 1 土壌の役割
7. 3. 2 土壌の性質
7. 3. 3 土壌の管理
7. 4 生物的環境
7. 4. 1 雑草
7. 4. 2 病害虫
7. 4. 3 総合的有害生物管理(IPM)
第8 章 作物の栽培管理
8. 1 栽培管理技術
8. 2 作付け体系
8. 3 耕耘
8. 4 水田作と畑作
8. 4. 1 水田作
8. 4. 2 畑作
第9 章 作物生産と環境保全・持続性
9. 1 農耕地生態系の特徴と機能
9. 2 農業による環境負荷と対策
9. 3 環境に配慮した作物生産の概念
9. 4 環境保全型農業の栽培管理技術
索引
執筆者紹介
■編集者
大杉 立 (公財)農村更生協会八ヶ岳中央農業実践大学校
■執筆者(執筆順)
大杉 立 (公財)農村更生協会八ヶ岳中央農業実践大学校
青木直大 東京大学大学院農学生命科学研究科
山岸順子 前東京大学大学院農学生命科学研究科